INTERN憧れのおとなに会いに行った学生に密着!
“くまモン”こと今村さんは、ネット動画である一人の民間企業の社長さんのスピーチに感銘を受けました。「どうせ無理」という言葉をなくそう。強い言葉と、その優しい人柄を見て、一瞬で好きになったという今村さん。勉強家で自身の哲学を持つ植松さんから、何を聞き出せるのでしょうか。
INTERN憧れのおとなに会いに行った学生に密着!
“くまモン”こと今村さんは、ネット動画である一人の民間企業の社長さんのスピーチに感銘を受けました。「どうせ無理」という言葉をなくそう。強い言葉と、その優しい人柄を見て、一瞬で好きになったという今村さん。勉強家で自身の哲学を持つ植松さんから、何を聞き出せるのでしょうか。
大阪国際大学の今村と申します。
今日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。遠いところ、どうも。今日はどうだった?
先ほどの講演もロケット作り体験もありがとうございました。楽しかったです!
植松さんって新しいことをどんどん思いつきそうだなと思ったんですけど、今やりたいことってあるんですか?
今はね、学校をつくろうと思ってる。社会に出る手前の働くことを学ぶ専門学校っていうかんじかな。働くっていうことに対して、キャリア教育を専門的にやるところが必要かなと思ってね。
そうなんですね。
きっと素敵な学校になると思います。
けど、新しいことをやるっていろいろ難しいこともあると思うんですけど、今までどうやって乗り越えてきたんですか?
昔はとにかく勉強したね。
勉強して、乗り越えていった。
で、いろんな人と喧嘩するようになった。そのとき思ったのは、勉強すればするほど、いろんな人をやっつけられるようになって、あー、学校で習ったのはこういうことだったんだなーって。人を負かすための勉強っていうかね。昔はすごいイヤに思ってたことを、自分がやってた。自分もようやく普通になったと安心したけど、心はどんどんダメになっていったよね。
がんばって、人やっつけて、ものが売れるようになって。自分が完全に正しいと思ってたんだ。けどいろんな人にすすめられて勉強会みたいなところに行って。時間の無駄だと思ってイヤイヤだったけど、そこにいる人たちって会いたくてあった人じゃなかったんだよね。よくいうけど、ネットで情報を探すと自分の欲しい情報しか手に入らないじゃない?新聞を読むと、予期せぬ情報に会えるっていう。
その出会いがいまのいい方向に…
そう。自分が会おうと思って会う人たちと会ってたら、何も生まれない。そういう人たちと何かやるときに、その訳のわからない状態から、人間って何かを生み出すんだって思ったわけ。人間のイレギュラー性というかね。
わたし、もともと人見知りで、自分から話しかけるのも苦手で。大人数がすごく苦手なんです。克服したいとは思ってるんですけど…
ぼくも東京に行くと人がいないほうに行っちゃう(笑)。電車でも勇気を出して乗らなきゃいけない。なんであんなに人が多いんでしょうね。うちの会社さ、19人しかいないのに、施設ばっかり増えていくの。あいつどこいった?ってザラなの(笑)。採用はかけてるんだけども。
植松さん、テレビとか結構出てるのに、「私もロケットつくりたい!」とか、採用にも反響があるんじゃないですか?
まったくないね。おそらく理由としては2つ。
ロケット開発なんて、よほど頭よくないと無理だと思われている。あと、なんでそんな小さい会社にって思われてる。うちの大卒の子も親に言われてるらしいからね。
今の大学生って大企業志向ですよね。わたしもその意識があったりする。中小企業のほうが自分のやりたいことができる気もするんですが…。就職活動で考えるべきことってなんだと思いますか?
ぼくは飛行機をつくる人になりたかった。飛行機をつくるのに、流体力学が必要だったからそれを学べる大学を選んだ。そして、飛行機をつくる会社を探した。だから、やりたいこと、大好きなことを基準で選ぶんじゃないかな。名前で選ぶことってちがうと思う。だって、大企業に入ったはいいが、どこに配属されるかわからないよね。
たしかに…中小企業の方が好きなことができそうな気がします…。
これはおそらく、保護者が原因。オイルショックのころ、1970年代前までは中小企業がいっぱいあった。けどだんだん減ってきて、そのころに大企業が生き残った。だから、そう思い込んでるのかも。いまや大企業も安定とは程遠いと、ぼくは思うけどね。
大きい会社に入ったら、営業をまずやらされるらしいんですけど。営業って競うことが多そうで、私はちょっと気がひけるというか…。
うん。勝ち負けってさ、いろんなやり方があって、きっと勝とうと思ったらえげつないやり方もあってさ。そういう風にやられたくないよねって気がするから。うちの会社はノルマとかなくて、モットーは「なるべく働かない」っていう。
植松さん、小学生へのイベントを年間130日やられてるって聞いて。1年の3分の1ってすごいなーって!あの、失礼なんですけど、本業のお仕事は大丈夫なんですか?(笑)
それはね、利益率を高くする努力をしたからなんだ。知恵と工夫だね。だから、あまり働かなくていいようにしました。
なるほど! ちょっと話が変わっちゃうんですけど、今日の講演のロボットの話で思ったことがありまして。ロボットが増えてくると、人の仕事もなくなってきて、雇用もなくなっていくんじゃないかと。便利になっていく必要ってあるのかなって思ってしまうんです。
「便利を何に使うか」だよね。おそらく、便利を“ラクする”ために使う人たちってロボットに負けちゃう。そうじゃなくて、便利を便利になったおかげでできることのために使う、“より良く”のために使える人たちが前に進むと思うんだ。 たとえば、工事現場でパワーショベルを使っちゃダメ。石器しか使っちゃダメってなったら、どうなると思う?
きっとやばいですね、それ(笑)。 果てしない時間がかかる。
そう、雇用は絶対に増えるけど、いいことじゃない気がするでしょ? 冷蔵庫にせよ、洗濯機にせよ、機械は人に時間をくれたんだ。その時間で人は何をするか、なんだよね。
働く基準を見つけるために好きなことをしぼりたいんですけど、好きなことがありすぎて、優先順位がつけれないです。どうしたらいいと思いますか?
それは、費やした時間×成果が大きいものを選べばいいと思うよ。 頭の中でシミュレーションしてみたら?具体的にやってる姿をイメージするんだ。それと、まずひとつやってみること。それを足がかりにして他もやってみるっていうのが確実な方法かな。たとえば、どこかの企業で働いてみる。そうすると、いろんな人脈を得られる。だから、まずはスタートさせる。属してみる。何事もやってみるって大事かもね。
やってみるか…。たとえば、やるためにお金がかかるってことあるじゃないですか。「海外に行きたい」にしてもお金がかかる、そういうことって優先順位が落ちていくというか。
会社に入ったら、仕事で海外にいくこともあるよ。そう、考えてみるのもありだよね。
あぁー…でも最近、好きなことの基準を考えれば考えるほど、わからなくなってきていて…。
好きは何個あってもいいし、基準もいらない。たとえば“愛”って1〜100のゲージって存在しないと思うんだ。好きは好きでしかない。それは、他者評価を基準にしてしまってるかもしれないよね。誰かより上手かっていうのを基準にしちゃうといけない。
参考になる考え方です…!大学生のうちにやっておいたほうがいいことってありますか?
「本を読むこと」かな。最近でも、ロケットが好きって言う割に、まったくロケットの本を読んでない子もいるからね。好きでしょうがなかったら、新聞でも一瞬で見つけられるしね。逆に「嫌い」もそう。ぼくは映画の「JAWS」を見て、サメがダメになっちゃった。おかげで、サメをすぐに見つけられるし、普通の人よりサメのことが詳しくなっちゃったんだよね(笑)。
嫌いなものでも知りたくなっちゃうんですね。
うん。けど子どものころって、みんなそうだったと思うんだ。それを、いまもやってりゃいいだけの話なんだよ。
植松さんのお話で、「街をつくる」といったこともあったんですが、どうやってそんな仕組みやシステムを閃くんですか?
問題があったら、まず書く。で、その下になぜ問題なのか書く。さらに原因を考えてみる。それを繰り返していくと、問題ってだんだん小さくなっていって、そこに本質がある。「なぜ」を積み重ねてみるんだ。
けど、大きな問題になると、なかなか変えることって難しいと思うんです。変えていけるものなんですか?
ひとつヒントになるのは、異業種ということなんだよね。ぼくらがマグネットで成功したのは、異業種の人間だったから、ふつうやりたがらないことをやったわけ。ふつうは強いマグネットを作ろうとするんだけど、ぼくらは弱いマグネットが新しいニーズだろう信じてやった。それができたのは、「知らなかった」から。「知らない」って奇跡を起こす最高のリソースなんだよね。知らないからってできないって思ったらダメ。化けたりするから。
そうなんですね。植松さん、すごく頑張られているので、気になったんですけど、仕事とプライベートって、分けてますか?
ぐっちゃぐちゃだね(笑)。 職業っていっぱいあんのさ。人間の本当の仕事って、「より良く」の追求だと思ってて。その気持ちがあれば、どんなものも仕事。だから、それは日常生活と仕事、ごちゃまぜになっちゃうよね。 たぶん、いつももっとよくならないかなってことは考えてるよね。 そのときに、過去に考えてたこととかがあれば、それがつながるときがあるんだ。だから、いろんなことをやっとくといいんだっていう気がする。
なるほど。この「おとなインターン」という企画で街の人たちにインタビューして、「仕事のやりがい」を聞いてまわっています。植松さんはどうですか?
このまえ、大学生が働きたいってウチにきたの。ある程度働いているうちに、「もっとやりがいのある仕事がしたい」って。それって、困難なことを乗り越えたときに、感じるものだけど、あなたはそれ避けてるよねって言ったの。現在できないことを乗り越えたときに、やりがいって感じるものだから。一生の繰り返しのなかだったら、「ありがとう」ってお客さんに言われることだったりするかも。けどそれも工夫の連続で、「より良く」を求めているからこそだと思うんだよね。やりがいは大事だよね。けど、与えられるものではないからね。自分のガッツで見つけるんだと思う。
ガッツ…そうなんですね。植松さんの仕事に対する信念ってなんですか?
繰り返しになっちゃうけど、仕事としてはやっぱり、社会、人のために役立つかどうか、「より良く」を求めてるかどうか。たとえば3つ星レストランがなぜ星3つなのか、それは「より良く」を求めているからだと思うんだ。ブランドって結局は自分との戦いで生まれるもの。どうやって工夫していくか、去年よりどうやっていいものつくろうとするかっていうね。
将来海外で働くことも考えてます。ヨーロッパとか、北欧とかに興味があって。
そうなんだ。ヨーロッパかぁ、遠いね。
そうなんです。熊本の家族と離れたくないなって思ったり。いま大阪で一人暮らししてて、家族の大切さも気づいてきたんです。けど、それって自分のやりたいことが狭まるんじゃないかって悩んでいて。
うん。あの、宇宙飛行士になるための条件ってあってさ。AとBどっちもっていう人が選ばれるんだ。宇宙空間ってどっちも捨てれないってときがあるんだよね。
どっちかを選ぶとかじゃない…?
両方実現するためには、どうすればいんだろうって考えることが大事。どっちかをあきらめないといけないと考えちゃうと、選んだ方でも不幸になると思うよ。 それはたぶん、「一所懸命」ていう教育が間違ってるんだと思う。だって、人生って中途半端だらけだから。いかに、いっぺんにいろんなことできるかなんだ。
へー… 近い海外だったらいいんですけど…
そうか北欧か、遠いね。じゃあ、尚更ぼくががんばって飛行機つくらないとだね。実はさ、大気圏を飛べる飛行機をつくろうと思っててさ。今の飛行機だと、アメリカまで12時間。あれは音の速度を超えられないからなんだよね。ジェットエンジンがあればなんだけど、空気がないと動かない。じゃあ、空気がないところまで、行ったらいいんじゃないかと。そうすると、アメリカまで4時間。北欧だと6時間ぐらいでいけるようになるんだ。すごいでしょ?がんばるよ。
今回の企画が楽しく働くためのコツを探すっていうことなんですけど、植松さんのなかで何かありますか?
まずは、好きなことをやる。そして、「嫌なことをやらない努力」っていうのも、したほうがいい。嫌なことがあるからって、投げ出しちゃダメなんだけど。そもそも引き受けないようにするのも大事。嫌なことは身体によくない。だから仕事が嫌だと、最終的には辞めちゃうんだけどね(笑)。
もともといた会社をお辞めになったじゃないですか。その辞めどきはどう判断したんですか?
すごく悩んだね。所得がおそらく相当減るだろうと。けど、そのときたまたま見た映画がアメリカの先住民が出ててね。文明とかけ離れてるんだけど、すごい幸せそうなんだ。そのとき高い給料もらってるけど、家賃と同じぐらいの駐車場代払っててね。収支で見たら、たいして変わらない。田舎でもやっていけるんじゃないかと思って。 実家の仕事を、果たして自分がやっていけるかっていう問題もあった。辞めるって決めてからは、お盆休みとかになると実家に帰って、作業服着て働いて使い物になるか試した。で、辞めた。
両方してみる。といったイメージですか?
ときどき、「自分には夢がある。なので、その会社を辞めようと思います」って突然辞めちゃう子もいて。いやいやちょっと待ってよ。土日休みだったら、その期間を使って始めてみたらって。そしたら給料もらいながらやれちゃう。で、いけそうなら辞めちゃう。並行しちゃって構わないと思う。
なるほど! わたし、結構だらだらするの好きなんです(笑)。この時間めっちゃムダだなーって考えながら過ごしてしまう。 時間を有効に使うにはどうしたらいいのかなって。
そのうち気づくけど、人生って短いんだわ(笑)。
棺桶に入る前の1秒も、いまの1秒も一緒。ぼくらロケットでそれを体感したから。発射の2ヶ月前と、カウントダウンの心臓が破裂しそうなときも同じ時間なの。
そんなに緊張するものなんですね!
そうだよ。だからこそ、日常のなかでの時間は大事にするようにしてる。まずは、迷う時間を減らす。物を置く場所を明確にとかね。あと、靴下買うときは同じ品を10足買ってくるから、迷わなくていい。あと、人が並んでいる店は入らない。時間がもったいない。もし本当に食べたかったら、自分でつくってみる。その方が大量生産したものじゃないし、贅沢だと思わない?
植松さんの人生の最終目標をお伺いしてみたいです。
ぼくはプラモ屋のおやじになってみたいです(笑)。 何も考えずにプラモ屋のおやじをやれたら、一番いいね。だって、もし50年後、宇宙行くのがふつうになってきたら、それも夢のある仕事じゃなくなってくると思うんだ。そのとき、何に夢をかんじるのかって。
それでプラモ屋なんですね(笑)。
理想はね(笑)。けど、宇宙は夢があっていいよねなんて言われるうちは、まだまだ駄目だなと。 ぼくはもっと一人一人の夢って大事にされるべきだと思っている。そういった意味じゃ宇宙をもっともっと近づけたいんだよね。今日来た子どもたちも、ロケットを作りたいって子がいたら、アドバイスができる人になったわけだから。そういう人たちが増えていったらおもしろいし。
わたしの夢は自分の図書館をつくることなんです。世界をまわって、いい本を選んでおいて、地域の人たちが自由に出入りできる空間をつくりたいと思っていて。
すばらしいじゃない!いいね。 図書館ってさ、知の倉庫なんだよね。だけど、日本の図書館って置く場所がすくないから、古い本をどんどん捨ててるんだって。あれは悲しいよね。だから公的なところが無理なのであれば、民間の誰かがやるしかないよね。 んー、いい夢だね。いまからでもできそうな夢だよね。ぼくも小学生から読んでいる本が山ほどあるんだ。すごい偏ってるけど(笑)。
本って読むものが偏るじゃないですか。ときどき姉の本を読むけどおもしろくないなって(笑)。 偏っていいんですかね?
全然問題ないね。昔の本屋ってさ、明らかに店主の趣味丸出しってかんじが多かったのね。だから、どの店行ったら何があるかわかってしまうの。いまだったらどこいっても同じ。個性が出てないと、おもしろくないよね。
たしかに。それは思います。
民主主義の国だから、「あいつらにやらせておけばいいよ」ってなったら勝ち。仕事もプライベートも一緒で、必要だよって言われたいじゃない?必要とされるって偏ってるからなんだ。だから、個性・偏ってるって大事なんだよね。それは人とちがう努力が必要で。まわりと自分を比べて、自分が変だと感じることは全然しなくていいんだ。
最後になっちゃうんですけど、「おもしろいおとな」ってどういう人ですか?
ぼくがこの人ステキだなって人は、多趣味、そして深い。好きなことにのめり込んじゃう人。結局そういう人って、時間とお金を上手にやりくりしてる。やっぱり好きかっていう純粋な気持ちだけで良いと思うけどね。それが多い人はきっと接点が増えて、人間関係も広がるから魅力的になる。趣味がありませんっていう人はつまらないよね。最近そういう学生が増えてるイメージだよね。
趣味と同様に、特技を聞かれることもあって。それだとハードルがすごく上がるから嫌で。
優劣で判断するんじゃなくて、好きかどうかでいいと思うし。 あと、間違いなく子どもっぽい人がいいね。おとなっぽいって、ろくなことがないよ。子どもっぽくて、TPO守られてたら、いい。 変わった企業の集まりとか勉強会とか、世の中にはいっぱいあるから、いろんな人とつながりができるし、そういった集まりはときどき顔を出しておいたら、未来にとっていいことはあると思うよ。会社って割と閉じた場所だからね。
そうですか!今日は長い時間、ありがとうございました!
いえいえ、 こちらこそありがとうございました。
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