INTERN

インターンVol.2

憧れのおとなに会いに行った学生に密着

グローバルビジネス学科
3年次生
pico
一般社団法人
あがり症克服協会 代表理事
鳥谷 朝代さん

就職活動を控え、人見知りという自分の弱点を克服したい“pico”こと橘さんが会いに行ったのは鳥谷朝代さん。元あがり症の過去を乗り越え「あがり症克服協会」を発足した女性です。鳥谷さんの包み込むような優しい微笑みに、不安いっぱいの心は少しずつほぐれ、聞いてみたかったさまざまな質問があふれ出しました。

一般社団法人あがり症克服協会代表理事、株式会社スピーチ塾代表取締役 鳥谷 朝代さん
中学1年生の本読みで、自身のあがり症を自覚。以来17年間、苦しみ続ける。
話し方講座と出会い克服した後、自身の経験を伝えるべく14年間続けた公務員生活に終止符をうち、全国初の元あがり症によるあがり症克服のための協会「一般社団法人あがり症克服協会」を発足、理事長に就任。克服へ導いた受講生は73,000人を超える。
  • 仕事を辞めるか、あがり症を治すか
  • 苦手を仕事にした理由
  • 毎日感じている「やりがい」とは?
  • 10・20代で迷うことにも意味がある
  • 経験が自分を作る
  • ブレない生き方を貫く
  • 時代にあった発信力を磨く
  • 年齢や学歴よりも大切なこと
  • 働くことは責任が生じること

仕事を辞めるか、あがり症を治すか

pico 本日はお時間いただきありがとうございます。

鳥谷 こちらこそ、遠いところからありがとうございます。

pico 私は、就活のために、人見知りやすぐ緊張してしまうところを克服したいと思っています。鳥谷さんは、なぜあがり症を克服したいと思ったのでしょうか?

鳥谷 私が緊張・あがり症を自覚したのは中学1年生の頃。教科書を読むのに当てられるでしょ?その時に、突然声が出なくなりました。緊張して震えちゃって。その出来事をきっかけに中学高校の6年間、まったく人前で話せなくなってしまったんです。

pico そうだったんですね。

鳥谷 はい、当てられるのがわかっている時は「お腹が痛いです!」って仮病を使って保健室に逃げるという…そんな6年間でした。

pico 今の鳥谷さんからは想像がつかないです。それからどうされたんですか?

鳥谷 そのせいで大学進学も諦めて、市役所の職員になりました。でも、働き出してからも人前で話す機会がある度に休んでいたので仕事にならなくて。そんな時たまたま「話し方講座」を知って通うようになり、克服することができました。だから、克服したいという前向きな気持ちよりも、これはなんとかしないと仕事が続けられないっていう後ろ向きな…。

pico 危機感ですね。

鳥谷 そう。仕事を辞めるか、治すか、どちらかしかなかったの。

pico 話し方教室では、なにを得たのですか?

鳥谷 そもそも、あがり症で悩んでいる人って、自分だけだと思っていたんですよ。でも、教室で「普通に働いている人が同じように悩んでいるんだ」と知り、すごく安心しました。

pico 人前に堂々と立てると思えた一番の理由はなんだったのでしょうか。

鳥谷 緊張しても声は出せるんですよ。今も緊張はするんですけど(笑)。「はじめまして」とか「こんにちは」「よろしくお願いします」っていう一言目が、練習しているから出るんです。でも、昔は出なかった。そこかな。

pico 私もいざという時に緊張しちゃいます。就活のためにも、そこは克服したいと思います。

鳥谷 今は?

pico …話せます、緊張もありますけど。

鳥谷 私とこうやって会話が始まると、話すことに集中ができて、いつもの橘さんで話せるんですよね。

pico はい。

鳥谷 そこですね。これを話さなきゃっていうプレッシャーを自分にかけてしまうと緊張してしまうけど、本来会話って楽しいことだし。面接にしろプレゼンにしろ、相手との会話を楽しむ時間だと思うんですね。それができたら、きっとうまくいくと思います。

苦手を仕事にした理由

pico なぜ、苦手なことを仕事にしようと思われたんですか?その勇気が、どこから生まれたかを知りたいです。

鳥谷 できなかったことができるようになった、という自分自身の体験を、自分のものだけにしておくのはもったいないじゃないですか。同じように苦しんでいる人の役に立ちたいな、と思って始めました。

pico 公務員のお仕事を辞めることへの迷いはなかったんですか?

鳥谷 よく前職は公務員なんですっていうと驚かれるんです。いってみれば、今の仕事は不安定ですから。でも、不安や迷いは全然ないんですよね。多分、好きなことをしている人はみんなそうだと思います。
もちろん、辞めてすぐの頃は、今までもらえていた固定給も無くなって、赤字になって。それでも「やりたい」と思ったということが、仕事を続けていく力になったかな。

pico やりがいをとても感じられているんですね。

鳥谷 もうね、やりがい「しか」ない!(笑)

与えられた仕事をしているのか、やりたいことを自分で見つけてやっているのか。その違いは大きいですね。

毎日感じている「やりがい」とは?

pico やりがいは、やはり大事なんですね。それがないと挑戦しよう、とも思えない気がします。

鳥谷 そうですね。でも、やりがいって難しいですよね。やりがいってなんだと思いますか?

pico 自分が貢献できているんだな、と思えたり、やりきった達成感を味わえたりすることかな、と思っています。

鳥谷 本当にそうだと思う。人の役に立つ、イコール社会の役に立つ、だと思いますが、それを私は毎日感じています。私が一番覚えているのは、人見知りで話せなくて就活で30社落ち続けていた男の子。最後は見事に採用を勝ち取りハイタッチして喜びました(笑)

pico すごい!

鳥谷 そういう時に、やってて良かったなぁって思います。

10・20代で迷うことにも意味がある

pico 今のお仕事は、とてもやりがいがあるということですが、楽しく働くために必要なことはなんだと思いますか?

鳥谷 以前は「今日は早く帰れるはずだったのに帰れないじゃん、しかも残業手当もつかないし」とか、条件面にやりがいを求めていたと思うんですよね。今は、原稿が立て込んで徹夜することになったとしても、嫌じゃない。そもそも仕事をしているという感覚ではないかもしれないです。

pico やりたいこと、好きなことの延長という感覚でしょうか。

鳥谷 そう。全然苦じゃないんですよね。

pico 苦じゃないって、めちゃくちゃいいですね(笑)。

鳥谷 いいでしょ(笑)。これは本当なんだよね。嘘でもなく。

pico 楽しいこと、やりがいを感じることを選ぶのが大事ということですね。

鳥谷 そうですね。ただ、私は10代・20代でそれを見つけたわけじゃないんですよね。

pico あぁ、そうですね。

鳥谷 私の10代・20代は暗闇の中にいるみたいな感じでした。やりたいこともないし、まともに働くことすら不安で。それが30代になって、ようやく好きなことを見つけて、今熟成されているところ。だから、10代・20代で迷ったり寄り道をしても、そこには意味があるんじゃないかなと思います。

pico 10代・20代の迷いは、今役に立っていると思いますか?

鳥谷 その時代があったからこそ、今受講に来られる方の大変さがリアルにわかるんですよね。そこに意味があったと思っています。

pico なるほど…

鳥谷 10代・20代でこれがやりたい!って思っても、他と比較できないでしょ?

pico 自分に向いているのかなって不安になりますね。

鳥谷 そう、やってみないとわからない。今の時代は就職したらずっとそこにいなきゃいけないってことでもないのかなって思いますね。

経験が自分を作る

鳥谷 アルバイトは何かやっていますか?

pico ファーストフードと販売の仕事をしています。

鳥谷 接客ですね、そういう仕事はいいと思いますよ。私も高校の頃ファーストフードのアルバイトをしていました。それまで人見知りで内向的な性格だったので、接客業は無理だと思っていたんですけど、すごく楽しかったんですよ。

pico そうなんですか?

鳥谷 すごくやりがいを感じたんですよ。自分でも、ちゃんと勉強して努力すれば人前で喋ったり、人と接することができるなって。その時に接客の基礎を叩き込まれたことが今でも活かされていますね。

pico 私も初めは緊張していましたが、だんだん慣れてきてお客さんと会話するのも楽しいなと思うようになりました。

鳥谷 接客のノウハウを勉強すると基礎がしっかりできるので、未だにそれは役に立っています。全然違う仕事についても、若い時に学んだことって役に立つんですよね。

pico 色々な経験をすることが大切ですね。

鳥谷 そう。どんな仕事も無駄はないし、どんな経験ものちに活かされることもある。私の場合、中学高校の時に話せなかったというネガティブなことですら、今ではセールスポイントですよね。それに共感して生徒さんは来てくださっているので。

ブレない生き方を貫く

pico 鳥谷さんが考える、「おもしろい大人」ってどんな人ですか?

鳥谷 おもしろい大人!?うーん、私は自分のことをおもしろい大人って思わないんですけど。

pico え、そうなんですか?

鳥谷 おもしろい?

pico 考え方とか、行動がすごいなって思います。

鳥谷 確かに、経歴は変わっているでしょうね。それをおもしろいって言ってくれる人もいるかもしれない。ただ自分は、やりたいことをやってきただけなんですよね。だからおもしろい大人っていうのは、周りがなんと言おうとぶれない人かな。

pico 周りに流されずに。

鳥谷 そうですね。私もこの仕事を始めてから周囲の反対を受けたこともありました。だけど、周りに何を言われようがブレないというのが私のやってきたこと。私の周りにいるおもしろい大人も、やっぱりそうかな。こだわりを持ってやっている人の方がかっこいいし、話していて楽しいですね。

pico 自分の意見を、しっかり言えるのはかっこいいと思います。

時代にあった発信力を磨く

pico SNSなどの登場で若者のコミュニケーション力や語彙力が低下したと言われています。今の若い世代を見て感じることはありますか?

鳥谷 私たちの時代は、何かを伝えようとすると直接会うことしかなかったんですよね。ただ、自分が10代の新人の時に、うまくコミュニケーションできていたかというと、できていなかったと思います。その時代ごとに悩みはあるんだから、便利なものは使えばいいと思うんです。そうじゃなくて、語彙力を上げたければ本を読んでみるとか。

pico 時代のせいにするのではなく、工夫できることがありますね。

鳥谷 あと、インプットだけじゃなくてアウトプットも大事ですね。日記とか書く?

pico 中学生の頃に書いていました。

鳥谷 今、TwitterとかFacebookはやっていますか?

pico Twitterをやっています。

鳥谷 それも一つのアウトプットですよ。生徒さんにもいつも言っています。人前で喋ることや自分の考えを話すのが苦手だという人は、まず自分の考えをSNSで発信してみてくださいって。

pico 今の時代だからこそ、そういう方法もあるということですか?

鳥谷 そうです。TwitterやFacebookで自分の考えを知ってもらうということは、素晴らしいことだと思います。私もやっていますよ。ブログも。この仕事を始めて15年目だけど、ずっと続けています。

pico ブログ、読みました!

鳥谷 ありがとうございます。書いたものを読んだ人が来てくれるとすごく嬉しいです。読んで、共感してくれたということは、その時点で繋がっているということですから。より親近感が湧きます。それがSNSならではのコミュニケーションだと思いますね。

年齢や学歴よりも大切なこと

鳥谷 今の若い人は…っていうのは、あんまり好きじゃないんです。若い人でもしっかりしている人はいっぱいいるし、その方たちが社会を引っ張っていくわけだから、私たちがついていかなきゃいけないと思ってる。

pico そうなんですね。

鳥谷 うちの認定講師も20代から60代までいるんですよ。飲み会をやると世代のギャップがすごい(笑)。でも、志が同じなのですごく楽しい。そこに年齢や学歴はまったく関係ありません。若いから、年だからこれをやっちゃ駄目というのは、すごくもったいないと思いますね。

pico 大切なのは志が一緒っていうことなんですね。

鳥谷 仕事って志がないと、どこかで迷ったりブレてしてしまうと思うんです。辛いな、辞めたいなって。協会でいうとミッション、使命なんですけど、そこに共感してくれる人が集まっていますね。

働くことは責任が生じること

pico 鳥谷さんにとって、働くこと・仕事とはなんでしょう?

鳥谷 当然ながら働くというのはお金をいただくことなので、プロ意識は重要ですね。お客様からお金をいただいて、それ以上の価値を提供しなくてはいけないというのが仕事の厳しさだと思いますし、それがやりがいでもあるのかなと。

pico アルバイト先でも、それはよく言われています。お客様からお金をいただいている以上、バイトも社員も関係ないんだよと。

鳥谷 そうですね、本当にそうだと思います。私の今の仕事は固定給じゃないので、病気や怪我をしたらゼロになるという厳しさもあります。この仕事を始めて15年目ですが、一度も仕事を飛ばしたことはありません。

pico 一度も!

鳥谷 暴飲暴食はしないし、体調が悪くなりそうだなと思ったら休む。体調管理も仕事の一つかなと思っているので。講座をやっていると、遠方から来てくれる方もいます。宿泊費と交通費と受講料を使って来てくれている人がいて、私が休むわけには絶対いかないんですよね。そのプレッシャーは毎日ありますが、それを嫌だと思わないですね。厳しさを感じながらも、厳しさをやりがいにしています。

pico そういう積み重ねがあって、今があるわけですね。

鳥谷 本当に信用を築くのは大変なんですよね。だけど失うのは一瞬。どれだけ努力をして築いても、失ってしまうことがあるんだという自覚を持ってやっている人はかっこいいし、仕事もうまくいっていると思いますね。

pico 私もその自覚を持った社会人になりたいです。
本日はどうもありがとうございました。
自分に自信が持てたと思います。

鳥谷 今日、私もすごく楽しい時間を過ごせたし、また会える気がするので。また、ぜひ遊びに来てください。ありがとうございました。

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