SEASON6 INTERN #02
リーダーとして社会で活躍したい。
本当に良いリーダーって、どんな人ですか?
キャプテンや生徒会長と、リーダーの立場を任されることが多かった銀ちゃん。いつしか、そこでのやりがいを見つけ、より良いリーダーになりたい、リーダーとして社会でも活躍したい、と考えるようになりました。そんな時、書籍『リーダーが身につけたい25のこと』を通じて出会ったのが、株式会社コーチ・エィの鈴木さん。いわば、リーダーのプロフェッショナルである鈴木さんに、いいリーダーとはどんな人なのか、聞きに行きました。
株式会社コーチ・エィ
代表取締役 社長執行役員
鈴木 義幸さん
人間科学部 心理コミュニケーション学科
銀ちゃん
株式会社コーチ・エィ 代表取締役 社長執行役員
鈴木 義幸さん
慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン)に勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、コーチ・トゥエンティワンの設立に携わる。2001年、法人事業部の分社化による株式会社コーチ・エィ設立と同時に、取締役副社長に就任。2018年1月より現職。これまで200人を超える経営者・管理職にコーチングを実施。

リーダーってなんだろう?

銀ちゃん
はじめまして。大阪国際大学心理コミュニケーション学科の粟津銀之佑と申します。
鈴木
はじめまして、鈴木です。よろしくお願いします。(自己紹介シートを見て)粟津銀之佑さん。銀之佑さん、かっこいい名前ですね。専攻は心理コミュニケーションなんですね?
銀ちゃん
はい、心理学と社会学とコミュニケーションの3つの分野を学んでいます。
鈴木
なんでこれを学ぼうと思ったの?
銀ちゃん
これまで僕は、体育会系の環境の中でずっと生きてきました。中学・高校でサッカー部の副キャプテン、高校では生徒会長といったリーダーを任せてもらっていたのですが、情熱やパッションといった自分の持っている引き出しだけでは、動いてくれない人もいました。リーダーとして成長するためには、人の心やコミュニケーションをいろんな角度で知らないといけないのかなと。この先、もっといろんな人と関わっていくために、心理面やコミュニケーションについて学びたいと思いました。
鈴木
だいぶ、人の心理についてわかるようになってきました?
銀ちゃん
ちょっとずつ(笑)。まだまだ、学んでいる途中です。
鈴木
そうですか(笑)。では、今日はよろしくお願いしますね。
銀ちゃん
よろしくお願いします!
『おとなインターン』は、「楽しく働く」ことについて考えるプロジェクトなのですが、僕の中で「楽しく働く」ために今一番大事にしているのは、人に慕われる、リーダーシップを発揮できる、ということです。副キャプテンや生徒会長の経験、今はアルバイトでもリーダーをさせてもらっていて、前に立って人を引っ張っていった時に、みんなが楽しそうにしていたり、慕ってくれることが、とてもやりがいになっています。
鈴木さんの著書を読んだのですが、リーダーについて、これまで僕が持っていなかった視点で書かれていていくつも発見がありました。鈴木さんがどんな価値観を持って、どんなモチベーションや気持ちで働かれているのか、とても興味があります。
鈴木
なるほど、ありがとうございます。
銀之佑くんが思うリーダー、リーダーシップってなんだろう?
銀ちゃん
人を正しい方向に導く、というのがリーダーの役割だと思っていて、その時に、人の上に立つのではなく、人の前に立って、自分がやってみせた上で引っ張っていく。自分にもこういう能力があるからついてきてね、と。それができるのがリーダーシップかなと思っています。
鈴木
ある方向に行きたくて、その方向に自分も進めるし、進むための能力もある。結果、その方向に人を導くことができたら、リーダーシップが取れている、ということだね。
銀ちゃん
かなと、僕は思います。
鈴木
なるほど。じゃぁ、ある方向に人を導くときに、どうすればついてきてくれると思う? 自分がそれを体現していれば、人はついてくる?
銀ちゃん
うーん、口だけではなく実際に僕がやってみせるということが大事なのかなと思います。例え話になるのですが、僕はボーリング場でアルバイトをしていて、ボールを売る目標数値みたいなものがあるんですよ。
鈴木
ボールってマイボール? へぇ!
銀ちゃん
はい(笑)。それを、僕が1球も売っていないのに、後輩に売れって言っても、あなたもできていないじゃないですかって言われてしまうので…。
鈴木
なるほどね。だから、やって見せることが大事だと。多分、人が行動するためには、大きく二つのことが必要だと思うんだよね。一つが、今話してくれたように、売り方がわかっている。やり方、つまり「HOW」がわかっていること。
もう一つ、すごく大事なのは、それをやることの意味、つまり「WHY」。人は、意味を求めている。だから、これをやることには確かに意味がある、と思えたら人は動くんだよ。特に、人から与えられた意味ではなく、自分で見出した意味。いいリーダーは、相手の中に意味を構築することができるんだよね。そのためにビジョンを語ったり、目標を語ったりするんです。
銀ちゃん
意味を見つける…。
鈴木
仮に僕がリーダーだとしますね。銀之佑くん、君の夢はなんだ?と話をする。ここでボーリングの球を売ることは、その夢を実現するためにすごく価値がある、だから売ろうよ、と。この球を売ってくれたら、さらに俺も嬉しい、周りも嬉しい、地域住民も喜ぶ。そうやって本当のリーダーは、意味を何十にも銀之助くんの中に作っていくことができます。
一緒に話しながら、銀之佑くんが確かにそこに意味を見つけて、意味を実感できたら、ボーリングの球を売ることは、ただバイト代を稼ぐということではなくなるよね。自分の夢の実現、地域住民の幸福、バイト仲間の幸せ、いろんな意味がそこに生まれるから。

リーダー然としないのが、
いいリーダー

銀ちゃん
なるほど…意味を感じさせてあげること。それが本当のリーダーということですね。いいリーダー、悪いリーダーというのもあるのでしょうか?
鈴木
色々あるけど、僕が思ういいリーダーは「リーダー然としない」ということかな。なるべくリーダーは正直でいた方がいいと思っています。基本的に人は正直な人についていくので。
自分の中で起こっていることを、できるだけストレートに正直に言えたらいいよね。「リーダーシップを発揮できていないんじゃないか迷っているんだけど、どう思う?」って言える人は、リーダーなんだなって僕は思います。わかりやすくいうと、カッコつけない。
銀ちゃん
ありのままで、悪いところもいいところも見せていくということですか。
鈴木
そう。
銀ちゃん
僕もそうなりたいですが…意地やプライドが邪魔をして、後輩には毅然とした態度で厳格な先輩でいないといけない、と思い込んでいたところがあります。結局、抱え込みすぎて自分がしんどくなってしまうんですけど。
鈴木
銀之佑くんは今まだ21歳だよね。僕も自分が21歳だった時のことを振り返ると、リーダーとして認められるように、リーダーらしく振る舞おうとしていたからね。若い時はそういうものなんだと思う。これから少しずつ変わっていくのかもしれないね。

何かがあるから楽しい、
のではなく、
何もなくても
楽しめる

銀ちゃん
鈴木さんは、今楽しくお仕事をされていますか?
鈴木
されて、いますね(笑)。
銀ちゃん
どんなところに楽しさを感じていらっしゃるのかを知りたいです。
鈴木
よく聞かれたりもするけど、どこに楽しさを感じているか、というよりかは全般楽しいですね。こういう理由があるから楽しい、ではなくて、基本的に楽しい。
銀ちゃん
全部が楽しい。
鈴木
全部というか、ベースが、かな。何かがあったら楽しい、というのは、条件が変わったら楽しくなくなっちゃうじゃない? 飲み会に行ったら楽しい、給料がいいから楽しい、ということになると、そうじゃないと楽しくないことになる。
銀ちゃん
確かに…。
鈴木
でしょう? 銀之佑くんは、リーダーシップを発揮して、人前で何かをやって「銀さんのおかげだよ!」と言われたら楽しい。でもそれは因果関係だから、条件が変わったら楽しくなくなっちゃう。それはちょっと違うんじゃないか、と僕は思っています。だから、ベースが楽しいという風になるには、どういうことができるのかをずっと考えてきましたね。
銀ちゃん
例えば、どういうことを考えるんですか?
鈴木
そうですね、ある科学雑誌に載った研究で、ペンを唇で噛んで漫画を読むのと、歯で噛んで漫画を読むのと、どちらの方が楽しく感じるのか、という実験があるんですが、どっちだと思う?
銀ちゃん
唇ですかね…?
鈴木
なんでそう思う?
銀ちゃん
歯だと食いしばって噛むことに集中しすぎるからとか…。
鈴木
答えは歯なんだ(笑)。なんでかというと、噛むと表情筋が上がるでしょう? 顔が笑顔のような表情になる。笑顔になると、脳は「今は楽しいんだな」と判断します。そうすると私たちは「楽しい」と感じるんです。楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいということがあるんだよね。何かがあって楽しいではなく、どうすれば自分から楽しい状態を作りだしていけるのかが、すごく重要だと思います。
銀ちゃん
なるほど。モチベーションを自分で高め続けているということでしょうか?
鈴木
うーん、それだと微妙に違うかな。モチベーションを上げよう、という風には思っていないんだよね。
銀ちゃん
自然と楽しくなる…?
鈴木
自然となるわけでもないんだよね(笑)。心の状態って、悲しかったり嬉しかったり楽しかったり辛かったり、いろんな状態があるよね? 何かがあったら悲しい、何かがあったら楽しいという外的な要因に依存するのではなくて、自分で自分の心の状態を作り出していけるようになれたらいいと思っているんですよ。
銀ちゃん
あぁ…おもしろいですね…!
鈴木
なんとなく伝わる?
銀ちゃん
はい、とてもイメージしやすいです。鈴木さんの言葉はスッと入り込みやすくて、言葉選びがすごいなと、本を読みながらも感じていました。やっぱり伝え方も大切なんだなって。

人は自分だけの「物語」の
主人公になりたい

銀ちゃん
リーダーにも伝える力は必要だと思っています。相手が思うように動いてくれない時、どうアプローチするのがいいんでしょうか?
鈴木
基本的に世のリーダーたちは、人を動かすのは飴と鞭だと思っていますよね。親も先生も管理職と呼ばれる人たちも。いいことをすればご褒美があるし、ダメだったら怖い罰がある。でも実は、このやり方だと長続きしません。その瞬間だけ人を動かせても結局ダメになる。
飴と鞭以外の方法で、どうやったら人を動かすことができるのか、自分なりの解を見つけることができたら、どこの会社に行ってもうまくいくと思うよ。
銀ちゃん
その人の自発性に任せる、とか?
鈴木
それは放任と同じになっちゃうね(笑)。動くかもしれないけど、確率は高くないでしょう。
銀ちゃん
確かに。
鈴木
僕なりの解は、みんなを「物語」の主人公にすること。例えば、今日ここにきて取材をしているじゃない? これをやったら100万円もらえるわけじゃないよね?
銀ちゃん
はい(笑)。
鈴木
やらなかったら先生から、お前ふざけんなよって怒られるわけじゃないよね?
銀ちゃん
ないです(笑)。
鈴木
じゃぁ、なんで来てるんだろう?
銀ちゃん
それは…自分の将来につながると思ったからです。鈴木さんに会いに行って、お話を聞くということが大事だと思って、来させていただきました。
鈴木
おぉ、素晴らしいな。そう、人は、過去・現在・未来に至るタイムラインの中で、オリジナルの「物語」を自分の人生の中に構築したいと思っているんだよね。銀之佑くんは今、わざわざ大阪から東京に泊まりがけできて、こんな風に話をして、それが自分の未来に繋がっていくという、誰のものでもない銀之佑くんだけの物語を作っているわけじゃない? 物語の中に入ると、人は動機づく。
不思議なことに、みんな自分の物語の主人公だからね。脇役という人はいないんだよ。全員が主人公で、自分の物語を生きていて、物語はオリジナルで、ハッピーなおもしろいものにしたい。
だけどリーダーが「俺が主人公で君たちは脇役だから、俺の物語を作るために君たち協力してくれよ」なんて言ったら絶対に人は動かないよね。あんまりうまく行っていない会社は、社長が主人公になっちゃう。
みんな主人公で、みんな物語を作りたくて、その物語を作ることに手を貸すよ、ということができたら、人はもっと素敵に生き生きと動くと思う。それが僕の考える飴と鞭以外の方法です。

成長するためには、
続けること、人に会うこと

銀ちゃん
僕は、楽しく働く上で「成長する」ことも大事な要素だと思っています。鈴木さんが、最近一番成長したと思うことはなんでしょうか?
鈴木
なるほど…懸垂かな。息子もラグビーをやっていて、体を鍛えるために懸垂マシーンみたいなのを家に置いていたんだけど、それでちょっと懸垂をやってみたら一回できるかできないかで、結構ショックでね。それから毎日、とりあえず必ずぶら下がって、ちょっとでも上がるっていうことをやっていたら、30回できるようになりました(笑)。
銀ちゃん
すごいですね(笑)!
鈴木
これは成長だね。今55歳で30回懸垂できるようになるというのは、なかなかの成長でしょ。ちょっとずつでもやり続けると、伸びるんだね。
銀ちゃん
どんなことでも。
鈴木
そう、どんなことでもね。言うのは簡単だけど、実際に体感すると、本当にそうだなって思うよね。
銀ちゃん
そうですね。
鈴木
あとは、ダボス会議かな。スイスのダボスに政治経済界のリーダーが集まって、世界の未来…今だとSGDsとかウクライナの問題について話し合うのですが、そこに行ってきました。いろいろなセッションに参加すると、明らかに頭の中が単視眼的じゃなくなる。普段から新聞も読むし、ニュースにも触れているんだけど、中長期的な地球の未来、世界の未来について、本当に危機感を持って取り組んでいる人たちと話をすると、自分の頭の中のタイムスパンが変わります。成長というのは、誰と会うかだと思う。だからこうやって会ってくれているのも嬉しいし、誰と会うかで人の成長はまったく変わる。同じ人とずっと会っているのも楽しいんだけどね。普段会わない人と、わざわざ会わないと、成長しないかもしれないな。
銀ちゃん
会って話すことで、知らない価値観や言葉を吸収して、成長できるということでしょうか?
鈴木
人は無意識のうちに、前提や思い込みというものが自分の中に溜まっていきます。そしてそれは自分では気づかないんだよね。だけど、自分とは違う考え方や視点を持っている人と話していると、その前提や思い込みが揺らぐのがわかります。自分はこういうことにこだわっていた、こういう視点を持っていなかった、ということに気づく。そうすると、自分の頭の中が広がる。それが成長なんじゃないかと思います。
銀ちゃん
ありがとうございます。最後の質問になるのですが、鈴木さんにとって「おもしろい大人」とはどんな人ですか?
鈴木
ひとつの考え方に囚われない人ですかね。
「座右の銘」というのはその人にとって大事なものですが、いつも絶対に正しいということはないので、ばんばん変えて良いと思うんです。「座右の銘は変えて良い」というのが座右の銘かもしれませんが。そういう大人は、結構おもしろいと思います。
銀ちゃん
本当はまだまだお話をしていたいのですが…貴重なお時間をいただいて、ありがとうございました!これから社会に出るために、いろんなことを準備していきたいと感じる時間になりました。
鈴木
こちらこそありがとうございました、楽しかったです。頑張ってくださいね。
SUMMARY
働く上で「楽しむ」ということがどういうことなのか、鈴木さんのお話を聞いて明確になりました。これまでの僕は、条件が満たされている仕事が「楽しい」仕事なのだと考えていましたが、試行錯誤をしながら働いていた過去の自分を振り返ると、例え条件が満たされていなかったとしても、普段から働くことに楽しさを感じているんだと気づきました。社会人になっても楽しむチャンスは自分次第と考え、置かれた環境で試行錯誤できる人でありたいと思います。
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