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私の理想の「おとな」は、
仕事も人生も大切に生きる人です。
短大生のさーちゃがこのプロジェクトでたどり着いたキーワードは「コミュニケーション」と「子育てと仕事の両立」。自分自身が生きる上で大切に思っている「コミュニケーション」にこだわり、大好きなお母さんのように、子どもを育てながら楽しそうに働く人。思い描く理想の「おとな」像に重なったのは、笑顔が素敵な女性起業家でした。
株式会社Lively 代表
岡 えりさん
短期大学部 ライフデザイン学科
さーちゃ
株式会社Lively 代表
岡 えりさん
神奈川県立保健福祉大学卒業。作業療法士として精神科病院や訪問看護ステーションで勤務後、出産・育児をきっかけに一度は専業主婦に。子育てと仕事の両立を目指し、オンラインコーチングの仕事を経て、2020年に株式会社Livelyを共同創業。オンライン上でのライブコミュニケーションサービスLivelyTalk(ライブリートーク)を立ち上げる。
誰もが安心して話せる
場所を作りたかった
さーちゃ
大阪国際大学 短期大学部の進藤咲良(しんどう・さくら)です。
私はコミュニケーションを大切に、子育てとお仕事の両立をされている岡さんに惹かれました。私も将来は子育てをしながら働きたいと考えているので、今日はいろいろなお話を聞かせてください。
岡
こちらこそ、よろしくお願いします。
さーちゃ
まずは、岡さんのお仕事について教えてください。
岡
Livelyというオンライン上のプラットフォームを作っています。話を聞くのが得意な聞き上手さんと、誰かに話を聞いて欲しい人をオンライン上で繋げて、話したい分だけ話すというプラットフォーム。オンライン上のスナックのようなイメージです。
さーちゃ
TikTokとかに近いですか?
岡
TikTokは、どちらかというと配信者を応援してもらう仕組みですが、私たちの場合、来てくれた人にスポットライトを当てていて、聞き手が相手の言いたいことを引き出すという仕組みになっています。日常会話やSNSの中でも、今は発言しにくい社会になっているけど、それぞれの意見を一旦話して受け止めてもらえる場所が必要だと思っていて。ここだったら安心して話せる、話したいという人がたくさんいます。
さーちゃ
利用している人は多いですか?
岡
そうですね。20代から80代のおばあちゃんまで幅広く利用してもらっています。上司と折り合いが悪くて、でも会社の人には言えないとか。友達に電話をして愚痴をいうのも申し訳なくて、とか。知らない第三者に話をすることで、頭の中を整理するみたいな感じですね。
さーちゃ
どんな相談が多いですか?
岡
恋愛相談、キャリア相談もあるし…お母さんも。私も子育て中に経験しましたが、子どもとずっと一緒にいるお母さんは、気がついたら大人と全然会話をしていない、ということが結構あるんですね。そういうお母さん達にも喜ばれていますね。自分の話を聞いてもらえるって。
生きるためには
コミュニケーションが必要
さーちゃ
岡さんのことを知ったきっかけはインタビュー記事でした。「コミュニケーションは活力になる」とおっしゃっていたのが印象に残っているのですが、なぜそう思われるようになったのかをお伺いしたいです。
岡
コミュニケーションが活力になる、と感じる理由は、祖父との出来事が大きいですね。
私の祖父は、92歳で骨折をして入院して、もしかしたら病院でボケてそのまま…という最悪のパターンまで家族は考えていました。実際には、回復して歩けるようになり家に帰ってきたんだけれども、体は元気になったのに本人は全然動こうとしない。どうしよう、とにかく毎日話しかけるしかないと思って通い続けました。
村一番の美人だったおばあちゃんの話、大変だった戦後を乗り越えてきた話、毎日コミュニケーションをとっているうちに、どんどん変わっていったんです。寝たきりだったのが、次は起きて座っているとか。何日後かには着替えて待ってくれていたりとか。話しをすることで顔の表情まで変わっていきました。
その時に、生きるためには話すこと、コミュニケーションがすごく大事なんだと実感をして。そういった職業に就きたいと作業療法士になり、病院の精神科や訪問看護ステーションで患者さんのサポートをしてきました。働きだしてからも、患者さん達がコミュニケーションによって元気になっていく姿を目の当たりにしていましたね。
さーちゃ
そこから、どういった経緯でこのお仕事に辿り着いたのですか?
岡
私も進藤さんと同じで、人生のやりたいことの一つに子育てがあって。子どもを授かってから仕事と子育ての両立にすごく悩んで、仕事を辞めて専業主婦になりました。仕事にやりがいもあったんですが、親がイライラしている状態で子育てをしたくなかったんですよね。子どもの内面を作るのに親子関係がすごく重要だということは、精神科に勤務していた時に実感していたので。
専業主婦になり子育てだけをしていると、それはそれで楽しいんですけど。何かをやりたいという気持ちがずっとありました。でも復帰したらまた忙しくなる。家でできる仕事で何かないかなぁと、いろいろチャレンジする中で、オンライン上で人と話をするというサービスを見つけて。やり始めたらすっごく楽しくてのめり込みました。あぁ、これは天職だ!と。
その仕事をするうちに、コミュニケーションを人はこんなに求めているんだということを実感して、これをもっと広めたいと考えるように。また、子育て期に社会と断絶されて苦しんでいる、もっと経済的に自立をしたいと悩む私のような女性に、働く場を提供したいという気持ちもあって、今の仕事を立ち上げました。
コミュニケーションの価値は、
そこに人の気持ちがあるか
どうか
さーちゃ
転職や子育ては大変だったと思いますが、頑張れたのは何かモチベーションがあったのでしょうか?
岡
専業主婦の時は、とにかく自立した女性になりたいということが一番でした。夫の稼ぎに頼らざるをえなかった時、めちゃくちゃ辛かったんですよ。対価はもらえなくても、家族の一員として働いているんですけどね。私は自分でお金を稼ぎたいという気持ちも強かった。最初のモチベーションはそれですね。働きだしてからは、子ども達の存在が大きいと思います。
うちは3姉妹なんですけど、将来子どもが欲しいという事も言っていて。もしかしたら娘たちのうち誰かは、私と同じような苦しい状況に陥っちゃうのかもしれない。
女性はもっと活躍できる、子育てしながらでも新しいチャレンジができるんだと背中で見せることが、この子達にとっても生きやすい社会に繋がるんじゃないかなという気持ちが、モチベーションになっています。
さーちゃ
私はまだ子どもがいないので、旅行や趣味がモチベーションですけど、大人になったら変わってくるんですね。楽しみです。一番嬉しいのはどんな時ですか?
岡
お客様から、感動しましたっていう声をいただくと、本当に作って良かったと思います。コンサルをするわけでもない、占いができるわけでもない。目の前で受け止める、会話をするだけでこんなに感謝されるんだって。さらに。そういうお客様に出会えた聞き手の人たちが、やっぱり喜んでくれる。嬉しいですね。
さーちゃ
コミュニケーションで人が動かされることは多いですよね。
岡
そうですね。この間、AIを搭載したアプリを作っている友達とご飯を食べている時に、人間はどこで感動するんだろうという話をしました。その友人は、AIとよくセッションをするらしいんだけど、そこではなかなか感動が生まれないと。
さーちゃ
就活でホテルへ面接に行っていた時、「感動を与える」というキーワードをよく目にしました。人が感動する心からのおもてなしは、人間じゃないと、生きている人じゃないとできないから。それは人の強みやなって思います。
岡
そうだよね。人間のホスピタリティの見せどころ。完璧じゃなくても、そこに気持ちがあるかどうかかなと思う。コミュニケーションの価値って。
理想と現実のギャップに、
どん底まで落ちた過去
さーちゃ
仕事で大変だったことはありますか?
岡
子育てを経て、まったく未知の世界に挑戦するのは大変でした。ITは弱いし、経営や事業開発もやったことがないし、人を雇ったこともないし。本当に何もわからない中で社長になってしまったので。将来こうなりたい、こういう仕事を作りたいというのはあるんだけど、どうやるかがわからないから、いろんな人に聞きまくって勉強しながら。
大変だったけど、自分の中で地まで落ちたのは、専業主婦で苦しんでいた時だったので。その頃は、大袈裟かもしれないけど生きているのが辛いと思っていたから。どうせこの人生が終わるんだったら、やりたいことをやり切って終わろう。別に上手くいかなくても、すべてがチャレンジだなと思っていました。
さーちゃ
生きていることが辛いと思うほどに苦しかった原因はなんだったのでしょう。岡さんが良ければ聞かせてください。
岡
自分の理想通りに物事が進まないことのギャップ、でしょうか。
結婚するまで、そんなに落ち込んだことがなかったんです。中学校は部活がすごく強くて、優勝して常に表彰されて。高校も進学校に行って、ちゃんと勉強して行きたい大学に行って。安定した医療職に就いて、自分が結婚したいタイミングで結婚相手を見つけて、子どもを授かりたいと思って授かれて。自分の中では、この仕事をしながら一人目を育てて、次2人目、3人目とそのまま順風満帆なストーリーを思い描いていたんですけど、初めて予定通りにいかないと思ってしまった。
子育ては本当に大変で、夫婦の関係が変わってしまいました。自分の中では、仕事、子ども、家のこと、今後の未来について考えていたんです。子どもは3人産むから、貯金もするし、おしゃれなんかも全然しなくなったんですよね。我慢が本当に多くなって。
夫は夫で、仕事を頑張らないといけない時期だったので、飲み会も多くて、朝帰りもある。育児はなかなかできないし、お金もめっちゃ使う。そういうギャップを埋めなきゃと、話し合いの場を設けてたんですけど、なかなか…。
さーちゃ
急には変えられないですよね。
岡
そうそう。そういう喧嘩というか夫婦のズレが起きて、話し合いをしての繰り返しだったんですよ。夫婦関係を自分の理想に寄せようとしていたことが、苦しみの原因だったのかなと今は思うんですが、それが一番辛かった。
私も夫も専業主婦の母親の元に育っていて、すべてお母さんがやるのが当たり前だと縛られてしまっていました。家を綺麗にしているのは当たり前、ご飯はおかずを何品も作って待っている。ワンオペも当たり前、保育園のお迎えもお願いできない、とか。仕事をやりながら、それが偏っていることに夫婦両方とも気づかなくて。
さーちゃ
そこからどうやって…
岡
私はこの人を自分の理想にはめて幸せになろうとしているのかなと気づいて、もし話し合って一致しなければ、離れればいいだけだ。離婚しても死ぬわけじゃないと思った時に、その代わり、自分は一人の女性として、一人の人間としてちゃんと立っていかなきゃいけないと思いました。
誰にも真似できない
想いがある、
自分を信じて
踏み出した一歩
さーちゃ
そこで天職だと思える仕事に出会えたんですね。
岡
窮地に陥って行き場がないから出会えた仕事。ゼロからのスタートでしたけど、頑張ったら違う景色が見えて、すごく楽しくなりました。だから、今考えている新しい挑戦も、できるようになったら多分楽しいんだろうなって。いつまでも新しいことを学べる環境にいられることが、本当にありがたいなと思っています。
自分が成長すると新しい人ともどんどん出会えますしね。いろんな視点や知見を持った人の話を聞くことができて、さらにまた違う人と出会えてと。だから、大変だけど楽しいがいつも一緒にセットである感じですね。
さーちゃ
それは少しわかります。私も、高校進学の時に友達もいない遠くの学校を選んだ経験があるのですが、そこで新しい友達といっぱい出会えたので、行って良かったなと思っています。
岡
そういう経験があると、この先新しいことを躊躇なく選択できますよね。
さーちゃ
でも、最初の一歩を踏み出すには勇気が必要だったと思います。一歩目を踏み出すことができた、きっかけようなものはあったんですか?
岡
一緒に事業を立ち上げたビジネスパートナーがいるのですが、彼の一言が大きいですね。
起業をする時、まず最初に鎌倉市がやっている起業支援プログラムに参加して、3ヶ月間勉強しました。でも、その3ヶ月間が終わったら、もうフリー。後は自分がやるかやらないか。どうしようって悩んで、支援プログラムで事業の相談に乗ってくれていたメンターの一人だった彼に相談しました。その時「知識は勉強すればついてくるし、誰かに貰ってもいいけど、想いは誰にも真似できない」と言われたんです。
24時間365日、誰よりもこの事業のことを考えて、それでも成功するのが少ないのが起業家の世界だと突きつけられ、この事業にそれだけの熱量を注げるのか、あらためて自分に問いかけました。そして、私には技術は何もないけど、想いはある。だからやりたい、と思えた。
さーちゃ
素敵な言葉をかけてくださったんですね。
岡
そうですね。彼をビジネスパートナーに共同創業して、私にはない経営やマーケティングの分野を補ってもらいました。起業ってみんなの力を使っていいんですよね。できないことは認めて、周りの人に助けを求めて仲間にしていけばいい。真似できない想いはあるから。
誰かに話を聞いてもらえる
ことが
当たり前の社会に
さーちゃ
岡さんがコミュニケーションをとる際に、心掛けていることはありますか?
岡
まず相手に興味を持つということですね。うまく話そう、面白いことを言おうとせず、どういう話をしたらどんな表情をするんだろう、今どういう感情なんだろうと相手を観察すること。
次に、なるべく自分のフィルターを通さないということ。その人が何を考えてその言葉を発したのかを想像して、まず受け止めるということはすごく意識しています。だから、なるべく「すごいね!」というような言葉も使いません。それはジャッジになってしまうので。
さーちゃ
話を聞くことで、岡さん自身が得られる気づきなどもあるんでしょうか?
岡
絶望の淵にいた最初の頃、話を聞きながら辛いのは私だけじゃないんだって思いました。みんなそれぞれの人生で、いろんなことを抱えて悩みながら生きているんだって、すごく勇気をもらえたというか。みんなが同志に感じられて嬉しかった、一人じゃないんだって。
さーちゃ
コミュニケーションによって救われるような。
岡
そうですね、日々救われている気がしますね。友達もそうですけど、何かあった時に素直に自分の感情を話せる相手が身近にいること。何を言われたから、ではないんだけど、安心して話せる相手がいるということは、本当に救いになると思います。
さーちゃ
岡さんにとってのコミュニケーションの理想の形があれば、教えていただきたいです。
岡
サービスに関することでいうと、誰かに話を聞いてもらうことを当たり前にしていきたいですね。日本は、カウンセリングやコーチングなど、聞いてもらうことにお金を払ったり、そういう場所に行くということ自体がまだまだ当たり前じゃない。もっと溜めずに、話をしに来ていいんだよと。
さらに広く社会全体でいうと、もっと「聞ける人」が増えればいいな。サービスを使わなくても、日常の中で近くの人の話を聞いたり、聞いてもらえたりすることができたら、もっと平和な社会になるんじゃないのかなという風に感じます。
さーちゃ
理想を叶える方法も考えたりしますか?
岡
何でも話して大丈夫という「場」が、やっぱり必要かなと思っています。場には、仕切るための目的や人がいないと秩序を保てなくなるので、何もかもを一つの「場」が包括することは難しい。でも、いろんなコミュニティがあって、自分の気持ちや状況によって、今日はここ、明日はここ、という具合に、いろんなところに簡単に接続できるといいんじゃないかな。
コミュニケーションは、
相手の存在を承認する愛情
さーちゃ
ど直球ですが、岡さんは楽しく働けていますか?
岡
はい、楽しく働けています。本当にやってよかったと思ってますね。
最近は末っ子が「私もLivelyで働きたい」と言いだしたりして。働くのは楽しいということを見せられているのかなと思うと嬉しいです。
さーちゃ
尊敬している人や、影響を受けた人はいますか?
岡
結構おじいちゃんの考えが自分の中にはあります。人に優しくしなさい、絶対いいことが返ってくるからといつも言われていたので、今いろんなものを持っていても、人に回せば、いつか何か返ってくるかなって。そういうところをすごく尊敬していたので。
さーちゃ
おじいちゃんにかけてもらった言葉で覚えていることってありますか?
岡
もう危ないかもしれないという時、孫を見せに行ったんです。子どもが生まれて半年ぐらいだったかな。まだ意識があるからってベッドの側に行って「おじい、子どもだよ!」って言ったら「お母さんになったんだね、頑張れよ」って。それが最後だったんですけど。
さーちゃ
愛されていたんですね。私のおじいちゃん…私は初孫なんですけど、私が生まれてからすごく優しくなったらしくて。すごく優しくて、ほんまに想ってくれているのがわかるから、大切にしようと思います。
岡
大切にしてくださいね。私は、コミュニケーションは愛情を表現するものだと思っています。相手を、存在を承認するもの。愛だと思っています。
さーちゃ
愛情とか思ったことなかったです。
岡
自分はこの世に生まれてきて良かったと認めてもらいたい。それは、人間の欲求の中にある一つだと思うんですけど、コミュニケーションによって承認が伝わった時、人はすごく安心するんですよね。良いことを言わなくても、目を見て、姿を見て、受け入れているだけで。自分という存在を受けとめてくれてるんだって、感覚で伝わるので。
さーちゃ
岡さんにとって「面白いおとな」はどんな人ですか?
岡
自分のやりたいと思うことを見つけて、行動している人かなって思います。
さーちゃ
岡さんも挑戦しているから「面白いおとな」ですね。
岡
そうだといいな。自分で今、楽しい、面白いって思ってるので。
さーちゃ
そういう「おとな」になりたいです。今日はありがとうございました!
今回の取材で特に印象的だったのは、「コミュニケーションは愛情を表現するもの」という岡さんの言葉です。これまでの自分になかった考え方で、岡さんが一つ一つのコミュニケーションを大切にしていることが伝わってきました。就職、出産や子育てなどのライフイベント、これから何が起きるかわからないけど、岡さんのようにコミュニケーションを大切に、一歩を踏み出し行動していきたいと思います。
さーちゃの体験レポートはこちら
短期大学部 ライフデザイン学科
なっつー
mamano chocolate
(ママノチョコレート)
中島 亜加里さん