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「何をするか」
よりも「誰と働くか」で
仕事を選びたい。人と一緒に働くって
どういうことなんだろう?
旅行が大好きなみのちーが会いに来たのは、これまで何度も訪れている大好きな沖縄で、憧れのホテルを築き上げた人。「人で差別化できるホテル」を掲げ、何よりも人を大切にしているその人に「人と人が働く」ために必要なことを教えてもらいました。
ハレクラニ沖縄 総支配人
吉江 潤 さん
国際教養学部 国際観光学科
みのちー
ハレクラニ沖縄 総支配人
吉江 潤さん
ハワイで100年を超える伝統を受け継ぐリゾート、ハレクラニによる2軒目となるホテル、ハレクラニ沖縄の総支配人。約40年にわたって、ザ・リッツ・カールトンなど数々の外資系有名ホテルの開業に携わり要職を務めてきたホスピタリティ業界のプロフェッショナル。
理想のホテルは
「人で差別化できるホテル」
みのちー
大阪国際大学の綱島実莉です。よろしくお願いします。私は、旅行が好きでホテルでの仕事にも興味があります。
吉江
すると、ここも候補の一つになるのかな(笑)では、まず私のことをお話ししますね。私は来年でホテル人生40年になります。最初に就職したのは東京のプリンスホテル。それから、東京の外資系のラグジュアリーホテルと呼ばれる、パークハイアット 東京、グランド ハイアット 東京、マンダリン オリエンタル 東京、ザ・リッツ・カールトン東京…そして、前職がザ・リッツ・カールトン沖縄です。その外資系ホテル全部、僕はオープニングのタイミングで関わってきました。
大手ホテルグループには、できあがった文化、仕組み、つまりグループごとの基準があって、新規開業の際には、その基準に沿ったものを順番に用意していきます。でも、ハレクラニ沖縄はハワイに1軒しかない独立系ホテルの2号店だったので、大手ホテルグループのように、できあがったものが何もないんですよ。じゃぁゼロからどういうホテルをつくっていこうか、と考えた時に、自分なりの理想のホテル像を叶えようと。それが『人で差別化できるホテル』でした。
みのちー
吉江さんの『人で差別化できるホテル』という言葉は、記事で拝見してとても印象に残っていました。
「満足」ではなく「感動」
吉江
「人でできる差別化」には二つの意味があります。一つは、お客様に接する私たち。私たちが接することで、お客様が次にもう一度ここへ戻ってきたいと思うかどうか。
みのちー
リピーターになってくれるか、ということですね。
吉江
実際、ハレクラニ沖縄には、何度もリピートしてくれるお客様がたくさんいて下さって、このコロナ禍でホテル業界がどん底に落ちた時にも支えられました。
みのちー
なぜ、それだけのお客様がリピートしてくださるんですか?
吉江
理由があります。ハレクラニ沖縄では、お客様一人ひとりの満足度は追求していません。満足を超える人の感情を追求しているんですけど…それはなんだかわかりますか?
みのちー
幸せ?
吉江
幸せもそうだし。
みのちー
感動?
吉江
そう、その通り。我々が目指しているのは「感動」です。お客様が「感動」を体験するから戻ってきてくれるんです。
要望が満たされれば、人は満足しますね。例えば、自分の食べたいものを食べたら満足。自分の行きたいところへ行ければ満足、自分の欲しいものが手に入れば満足する。でもそれって感動じゃない。では感動とは何か。例え話をしましょう。お住まいは、大阪ですか?
みのちー
奈良です。
吉江
よし、じゃぁ奈良に、初めて沖縄旅行を計画した4人家族がいたとしますね。数あるホテルの中からハレクラニ沖縄を選んで、2泊3日滞在して、食事をして、プールやビーチにスパ…ホテルの色んなところで遊び、家に帰ってから「楽しかったね、今回の滞在は部屋も綺麗だったし、食事も美味しかったし、特に大きな問題もなく、満足だったね」と言ってくれました。その家族は沖縄を気に入ったので、翌年も旅行を計画したのですが、ハレクラニ沖縄に戻ってきてくれるでしょうか?
みのちー
満足、だったんですよね。
吉江
そう、満足。
みのちー
あ…それなら、別のホテルに行きたくなるのかも。
吉江
正解(笑) 「満足」で終えたお客様は、次は別のホテルに行ってしまうんです。でも「満足」でなく「感動」してくれたお客様は、必ず戻ってきてくれる。
みのちー
どうすれば感動してくれるんでしょう?
吉江
お客様の期待を超えることです。ホテルによっては、記念日の時にすごいサプライズをするようなホテルもありますね。まぁ、うちもたまにはやりますけど、そういったサプライズの類いではなく、もっとさりげないこと。 このホテルにもし2泊3日滞在したとすると、お出迎えからお見送りまで、平均するとだいたい20人くらいのスタッフと関わるんですね。そのスタッフ達が、要望を伝えてもいないのに、自分だけが喜ぶ何か言葉をかけてくれたら、もしくは、自分だけが喜ぶ何か小さな行動をしてくれたら。それを一度ではなく、滞在中さまざまな場面で何度も体験したら、そのお客様は「満足」を越える「感動」レベルに達します。そうすればまた、必ず戻ってきてくれる。だからハレクラニ沖縄はこんなにリピーターが多いんです。満足でなく、感動を追求しているから。
でもそれは担当スタッフ一人だけじゃできないんですよ。情報の共有、横の連携、チームワークなしには、その小さな感動も生まれない。人を思いやる、それはお客様だけじゃなく、一緒に働く仲間も。それによって、仲間の信頼関係ができる。信頼関係なしにチームワークなんて生まれませんからね。チームで実践できて初めて、お客様が感動して、戻って来てくれる。これが「人でできる差別化」の一つ目です。
働く人が、
誇りを持てる環境
みのちー
「人でできる差別化」の二つ目はなんでしょう?
吉江
働いている私たち自身が、ハレクラニ沖縄で働いていることを誇りに思えること。ハワイの観光業、ホテルで働いている人は、本人だけじゃなく家族もそれをすごく誇りに思っている。一方の沖縄では、ホテルで働くということが、特に若い人からのイメージがよくないように感じています。きつい、安い、休みにくい、というような。
みのちー
まさに私の周りの友達たちの中にも、「ホテル業界はきついから」と進路を変更してしまう子がいます。
吉江
そこがね、とても大きな課題だと僕は思っています。ホテルで働くのは楽しいんですよ。だから、働く人が毎日楽しく喜びを感じて、誇りを持って働ける環境をつくりたい。 我々の仕事は、目の前の人に喜んでもらうこと。お客様が喜んでくれているのを感じられたら、嬉しいじゃないですか。嬉しいし、それが我々の仕事の本来やりがいである。でも、そのやりがいが感じられる環境のあるホテルというのは、限られているんですね。もちろん、プロフェッショナルとして誇りを感じられるところはたくさんあります。でもお客様からダイレクトに喜びを感じられるホテルはなかなかない。
みのちー
それはどういうことでしょう?
吉江
ホテルって運営するチームと経営するチームが別れているんですよ。ここは三井不動産という企業がオーナーで、我々が運営するチーム。例えば、ハイアットと冠のつくホテルはいろんなところにありますが、経営会社は全部別々なんですね。企業がホテルを建てて、その運営を委託している。だから同じブランドでも、オーナー企業によってホテルに求めるものが違うんです。一方のオーナーが、とにかく人から愛されるホテルをつくってくださいと言ったとしますね。かたや、別のオーナーは、とにかく稼いでくださいと。我々運営チームは、やはりオーナーに応えないといけないわけですよ。だから、稼ぐことを最優先に考えるオーナーの元では、まず効率を考える。目の前のお客様に喜んでもらうことよりも。
みのちー
なるほど…。
吉江
ハレクラニ沖縄のオーナーである三井不動産が我々に何を求めたかというと、目先の利益じゃなくて、長い…ハワイのハレクラニってもう100年以上続いているんだけど。ハワイのハレクラニのようにお客様に長く愛されるホテルをつくってくださいっていうことだったんです。
みのちー
それは素敵ですね…!
吉江
我々は、オーナー会社にすごくサポートされています。それがないと、僕の考える理想のホテル『人で差別化できるホテル』なんて実現できないんですよ。もしホテル業界を選ぶのであれば、ホテル名だけで選ぶんじゃなくて、ちゃんと、その会社を見極めた方がいい。新卒で最初に入ったところが「これがホテル業界か」っていう当たり前になっちゃうから。
一緒に働きたいのは
「いい人」
みのちー
ハレクラニ沖縄では、働いている人をすごく大切にされているのがよくわかります。私も、楽しく働くためには「誰と働くか」が何よりも大事だと思っていて。
吉江
ハレクラニ沖縄は、私と人事部長の二人から始まったので、どういう人たちと一緒に働きたいか、まず採用基準をつくりました。「思いやりを持って行動できる人」、「思いやりを持って発言できる人」「チームワークを重んじ、チームワークを実践できる人」これがハレクラニ沖縄の採用条件です。例えばTOEICで何点取らなきゃいけないとか、そういった基準は一切なくて、この3つだけ。この条件がそろった人を、我々のキーワードで「いい人」と呼んでいます。
みのちー
それが、吉江さんにとっても一緒に働きたい人ということですか?
吉江
そう。逆にいうと過去の経験から、そうじゃない「イヤな人」とは一緒に働きたくないな、と思った。(笑)
みのちー
「いい人」を採用した後は、こういうことをしていこう、という教育のようなものも決めていたんですか?
吉江
教育というよりこれ(カード)です。ここにはまず、ハレクラニ沖縄のビジョンが書かれています。ビジョンというのは、ハレクラニ沖縄はこういう風になりたいという中長期的な目標。5年前、私たちは「世界を代表するラグジュアリーリゾートをつくっていこう」という目標を掲げました。
そのビジョンに向かって、共通の使命は何かを明確にします。ビジョンの下にミッションって書いてあるでしょ?仕事の役割はみんな違うけど、これは全員共通の使命。みんな理解して、それをしなければいけない。使命だから。
そして裏側にハレクラニスタイルって書いてあるんですけど、これは日々の我々の行動の基準、基盤なんです。これも全員共通。この基盤を一人ひとりが理解して実践すれば、周りの人たちは心地よくなる。そんな仕組みになっています。
楽しむことを努力する
吉江
ミッションの中に、『have fun』って書いてあるのわかりますか? これは「一人ひとりが楽しむことを努力しないといけない」ということ。ハレクラニ沖縄に入社すると楽しい職場が待っていますよ、ということではないんです。
みのちー
楽しむことを努力する。
吉江
例えばプライベートで嫌なことがあったとする。でも、そんなこと職場の人には全く関係ないですよね。だったら、周りの人が楽しくなるような雰囲気づくりをすることも、一人ひとりの使命ですよ、と。
自分で自分をハッピーにしてあげなさい、ということですね。誰かにハッピーにしてもらおうとすると不満が出てくるから。どうしたら、この環境で自分がハッピーでいることができるか。苦手な人がいるから喋らない、じゃなくて、苦手な人がいながらも、どうやったら苦手な人がいるその環境で自分がハッピーでいられるか、ということを、日々追求しなさい、という考え方なんです。
みのちー
それが努力ということなんですね。ハッピーに働いている人とは、どんな人ですか?
吉江
みんな自然と笑顔ですよね。それこそマスクをしていても。たくさんのお客様からスタッフの笑顔が素晴らしいですね、って言われるんですよ。このハレクラニ沖縄は、過去様ざまなホテルで働いてきた上での集大成。理想のホテルづくりを実現できる環境があります。こんな幸せなことはありませんね。もちろん今が最終ゴールじゃないですよ。まだまだハレクラニ沖縄は飛躍していくしね。
日本で一番「人」のことを
考えているホテル
みのちー
Forbesの5つ星をとられて「世界を代表するホテル」という目標はもう叶ってしまっているのかなって思うんですけど、次の目標はあるんですか?
吉江
それは、働いている人の幸福度をあげることかな。ここで働いている人たちが幸福になることを常に考えています。ここほど社員のことを考えているホテルは日本中にないと思います。
みのちー
日本中で、ここが一番?
吉江
絶対一番(笑)
みのちー
それは惹かれますね(笑)
吉江
ここに来るお客様はみんなハッピーなんです。あとはここで働いている全員がハッピーであること。ここ以外あり得ない、ここで働いていることに誇りを持っていると言ってくれることが夢。
みのちー
最後の質問になるのですが、吉江さんにとって「おもしろい大人」とはどういう人ですか?
吉江
「おもしろい大人」? やっぱりそれは「いい人」かな。この人と一緒にいると楽しいな、と思うのは「いい人」。「おもしろい」って、人として尊敬できることだと思うから。
みのちー
たくさんお話しを聞かせていただき、ありがとうございました!
おとなインターンに参加する前から、ずっと会いたいと思っていた吉江さんに今回インタビューすることができて、漠然と持っていたホテル業界への憧れと不安が、いい方向へと変化するのを感じました。これまで「働く」ということにここまで向き合ったことはありませんでしたが、このプロジェクトに参加して、自分の人生の可能性が広がり、たくさんのことを勉強することができました。自分が間違いなく成長できたと思える貴重な経験になりました。
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人間科学部 心理コミュニケーション学科
銀ちゃん
株式会社コーチ・エィ
代表取締役 社長執行役員
鈴木 義幸さん