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大切にしていた夢を失った時、
前をむく方法を教えてください
幼少期からサッカーを続け、将来は大好きなサッカーに関わる仕事につきたいと思っていたふうあ。現役選手として最後となるはずだった4回生の春、膝の怪我が彼女を襲いました。選手として叶えたかった夢は絶たれ、サッカーのことを考えることすらしんどい…。長い時間目指し続けてきた大切な夢だったからこそ立ち止まってしまった彼女に、同じくサッカーをする側から支える側を選んだ「おとな」が伝えた言葉とは。
福山シティフットボールクラブ代表/GM
岡本佳大 さん
経営経済学部経営学科 4年次生
ふうあ
福山シティフットボールクラブ 代表・GM
岡本 佳大 さん
広島県広島市生まれ。高校時代には、サッカー選手としてインターハイの全国優勝を経験。25歳でサッカークラブの運営に乗り出し、2019年福山シティFCの代表に就任。福山市にJリーグクラブを誕生させる夢を掲げ活躍している。
「好き」とは違う
仕事について、
学んだこと
ふうあ
はじめまして。大阪国際大学の河村風愛と申します。本日はよろしくお願いします
岡本
お願いします。緊張せず自然な感じでいきましょう(笑)
ふうあ
ありがとうございます(笑)
岡本さんはサッカー選手からサッカークラブの経営者になられたんですよね。
岡本
そうですね。
ふうあ
私もサッカーに関わる仕事をしたいのですが、なかなか新卒でその仕事に就くのは厳しいとも感じています。岡本さんは、サッカーとは関係のない仕事に一度就かれていますが、その経験はどのように役立っていますか?
岡本
印刷会社に就職して、サラリーマンを3年間経験しました。そこで営業職に就いて、まず社会の構造を学びました。例えば物を売る仕組み、物ができる製造の現場、どういうルートでお客様の元に商品が届くのか。その経験が、福山シティFCというクラブをどうやってコーディネートしていくか、という今の考えに繋がっています。
それから、人とのコミュニケーションもそうですね。選手とのコミュニケーション、どうやってチームを強化していくか。そういう部分を非常に学べた3年間だったと思っています。
ふうあ
今の仕事にも繋がる経験になっているんですね。
岡本
自分でお金を稼いでみて、お金を稼ぐということの難しさや素晴らしさも感じました。それまでは親に助けてもらっていましたからね。自分で稼いで、ある意味自由を手に入れましたが、自由には責任もありますよね。自分の責任でお金を使うという選択をしないといけないですし、自分の判断で新しいことに挑戦していかないといけない。それまでのある種守られた世界から、社会に出ることによって責任感が生まれたと思います。
ふうあ
そこからサッカークラブの経営者になろうと思ったのは、どういうきっかけがあったんですか?
岡本
実は中学生ぐらいから、90分のサッカーゲームがどうやって運営されているのかという、裏側に非常に興味があったんですね。プレイヤーとしてはもちろん好きだったんだけど、プロデューサー側への憧れもありました。
大学まではプロサッカー選手を目指して、一生懸命サッカーをやっていましたし、一生懸命トライもしました。でもプロになることができないまま卒業することになって、いきなり自分の中からサッカーという選択肢がなくなっちゃって。
ふうあ
はい。
岡本
社会を知って勉強し直そうと就職はしたけど、やっぱり心の中ではもどかしさがありました。長年やり続けたサッカーを離れてみて初めて、サッカーの素晴らしさに気づいたんです。自分の人間的なところ、精神的なところは、サッカーを通して成長させてもらっていたんだなと。それで一念発起して脱サラをして、25歳のタイミングでサッカー界に戻ってきました。今度はプロデュース側でね。
ふうあ
プレイヤーからプロデュース側に立場が変わることで、何か変わりましたか?
岡本
現役だった当時は、自分の力で勝たしてやると思っていました。でもサッカーは11人の選手とサブやスタッフ、いろんな人が関わっているんですよね。早く結果にたどり着きたければ一人でいけばいいけど、もっと遠くにある大きなことを成し遂げたいのであれば、みんなで行った方がいい。自分の考え方を一つスイッチするだけで、結果は変わってくるように思います。
生きたいところで生きる
ふうあ
私は大阪に出てから、やっぱり地元の広島が好きだと感じるようになりました。でも働くことを考えると、都会に比べて選択肢が少なくなるのではないかと。「地元で働くこと」「地元ではない場所で働くこと」で、なにか違いがあったらお伺いしたいです。
岡本
一番好きなのが地元・広島なわけですよね。じゃぁ、地元で働きながら東京と大阪に仕事を作ればいいんじゃない、という考え方です、僕は。
今のIT・テクノロジーはすごいから、都会にいないと最先端の情報が取れないとかないじゃないですか。今対面でお会いしてますけど、オンラインで人に会うことだって、海外にアクセスすることだってできます。だったら自分が一番好きな場所で働くという選択肢が、これからの時代すごく大事なんじゃないかな。生きたいところで生きる。行きたい場所へ行く。
ふうあ
場所にこだわらず。
岡本
そんな人生にするためにはどうしたらいいか、というポジティブな発想で考えてみるのがいいのかな。
ふうあ
岡本さんの活動からは、福山へ貢献したいという気持ちをとても感じますが、やはり地元だからですか?
岡本
広島でみると地元ですが、生まれ育ったのが広島市なので、また別の土地にきて挑戦をしている感覚ではあるんですよ。
ふうあ
そうなんですね。では、福山に貢献したいという情熱はどこからくるのでしょう?
岡本
必要とされていると感じるからでしょうか。
自分が一番幸せを感じる瞬間は、やっぱり人から必要とされること。多くの人々に必要とされる、地域社会から必要とされる。それを叶えてくれる仕事が、サッカーだったということですね。
大変なことはもちろんいっぱいありますけど、ふとした時に「面白いことをやっているな、素敵な人生だな」と自分自身が思えるんですよ。
夢を持つことは大切。
でも縛られない
ふうあ
岡本さんがSNSに投稿されていた「夢を持ち、夢を叶え、夢になる」という言葉がすごく印象に残っています。
岡本
座右の銘なんです。それこそ大学4年生ぐらいの時にその言葉に出会って、かれこれ10年ぐらい自分自身が一番大事にしている言葉ですね。
ふうあ
どんな想いを込められているんですか?
岡本
多くの大人は子供たちに、夢を持ちなさいって言いますよね。でも、その大人が夢を持っているかというと、ちょっと疑問だったりもする。子供たちに夢を持てと言うからには、自分が大きな夢を持って挑戦し叶えている姿を見せることが、一番なんじゃないかと。
幸いにも僕は、20代前半の頃にそういった素敵な大人たちをたくさん見てこれた。だから今度は、自分自身が一生懸命頑張って夢を叶えて、いずれは多くの人たちの夢になれるような存在になっていたいですね。
ふうあ
今の夢を聞かせていただきたいです。
岡本
昔は広島県って、サッカー王国と言われていました。でも今本気でサッカーをやりたいという選手は、中学や高校を卒業するタイミングで県外に出ちゃうんですよ。そういった環境が残念だなと感じているので、もう一度サッカー王国広島を取り戻したい。
ふうあ
私自身も、もっと高いレベルでサッカーをしてみたいと思って県外に出た一人ではあるので、地元の一人としてすごく嬉しいです。
岡本
理想とするのは総合型クラブなんですけどね。女子チーム、小学生や中学生、もちろんトップ選手も。それを地元で挑戦できるというのは非常に大事なことだと思います。サッカーはもちろん、バスケットボールやバレーボールなどさまざまな競技種目を幅広い世代の方たちが楽しめる環境をこの備後エリアで作っていきたいと考えています。
ふうあ
クラブを発足した時に抱いていた夢と、今の夢に何か変化はあるのでしょうか?
岡本
日々変化していますよ。目標や夢というのは、自分の今の状態によってアップデートしていくべきだと思っているので、変な固定概念を持たない方がいいかなと。だって、今の時代すごく移り変わりが激しいじゃないですか。
5年前10年前の当たり前が今ではまったく当たり前じゃなくなっていますよね。もちろん自分自身も成長していきます。成長した自分によって目指すべき目標や夢が変わるのは当然の話なので、変に固執せずに自分の感性にしたがって今を生きるということが大事なのかなと。
ふうあ
夢にこだわりすぎないということですか?
岡本
過去に設定した夢や目標にしばられると、良い人生にならないかもしれないですね。
仮に今の現状に満足していなかったとして、今の自分を作っているのは過去の自分の考え方や行動ですよね。じゃあ未来をより良くしたければ、今からの自分の考え方や行動を変えていかなければ同じ結果になると思うんです。未来のために、どれだけ今を考えるかです。
挫折が人生の
ターニングポイントになった
ふうあ
私は大学4年生で、選手としてサッカーをするのは今年が最後だと思ってやっていました。でも、先日膝の怪我をして最後の一年を選手として過ごせなくなってしまい…。
入学する時に持っていた、選手としてピッチに立って、試合に勝って、自分の力で全国大会に行くという夢が叶えられない今、何を目指して頑張ったらいいんだろうと考えていました。
岡本
どこを怪我したの?
ふうあ
前十字靭帯断裂です。
岡本
そうなんだ、僕も前十字靭帯を断裂してサッカー選手を引退したんですよ。実はその怪我がめちゃくちゃターニングポイント。
ふうあ
そうなんですか!?
岡本
大学でプロにはなれなかったけど、社会人になってもそこそこのレベルのところでプレーしてたんです。でも、練習中に怪我しちゃって…。手術して1ヶ月ぐらい入院した時に自分の人生を振り返って、プレイヤーとしてはもう難しいかもしれないけど、やっぱりサッカー界で生きていきたいと思いました。今の仕事をやめてサッカー界に戻ろうと決断したのがそのタイミング。自分らしく生きるということを考えるきっかけになったのが同じ怪我なので、勝手に親近感湧いているんですけどね。
ふうあ
そうだったんですね…。今は選手として試合に行けないことが、すごくしんどくはあるんですけど…。チームで過ごす時間もこれが最後なので、支える側としてできることを考えて、サッカーを違う目線で捉えられるようになりたいです。
岡本
うん、あのね。自分に嘘はつかない方がいいですよ。だって、悔しいし辛いですよ。当たり前のようにできていたスポーツ、しかもラスト1年ができなくなったわけじゃないですか。
そこに対して自分の感情に嘘をつかず、悲しければ泣けばいいし悔しければそう言えばいいよ。でも自分がチームにできるサポートがあるのであれば、それも100%やればいいしね。
ふうあ
…。
岡本
自分の感情を押し殺すんじゃなくて、逆に自分の感情に素直になって自分と向き合う期間が大事なんだと思いますね。いいことばかりが人生じゃないしサッカーじゃないから。
それを受け入れた人、受け入れて次のアクションをプラスに起こせた人というのが、周りにいい影響を与えることができる貴重な存在になれると思う。是非そういう存在になってほしいな。後輩達が、きっと見ていると思いますよ。
ふうあ
今は人からかけられる言葉を前向きに捉えることができなくて、岡本さんはまず、どういう風に考え方や行動を変えていったんでしょうか。
岡本
最初は怪我をしてしまったことに対して逃げていたんですけど、ちゃんと自分と向き合うタイミングなのかなって思えたのが一つのきっかけだったかもしれない。
自分に正直になるってなんだろう、本当に自分がしたいことってなんだろう、この先の人生どうしたいんだろう。もっと言えば、過去の自分はどうだったんだろうと。本当にさまざまなことを自分自身の心に問いかける時間を作りました。
ふうあ
あぁ…なるほど。
岡本
自分と向き合うって結構大変じゃないですか。でも、これ以上落ちることはないんだから、ちゃんと一回向き合ってみようかなと。自分の素直な感情をノートに書いたり本を読んでみたり、またその本に書いている言葉に救われたりしたのが、大きなターニングポイントになりました。
ふうあ
私はサッカーや怪我のことを考えないようにしていました。今までの自分について、これからの自分について考えてみるきっかけなのかも…。
岡本
ふとしたことでいいと思うんですよね。3歳4歳の時に歩いた道をもう一回歩いてみるだけでも当時の素直な心に立ち返ることができるかもしれないし。
ふうあ
今日ここに久しぶりに来て、サッカーをやっていた中学生・高校生の頃の気持ちを少し思い出せたんです。せっかく地元に帰ってきたのでいろんな場所にもう1回行ってみようかなと思います。
岡本
サッカーのピッチって変わらないよね。自分がここでこういうプレーをしていたなぁって。そういう感性を今後どれだけ大事にできるかだと思うんですよ。
自分に余裕がなかったりネガティブな状況になった時、今まで見えていたものが見えなくなる瞬間ってあるでしょ。何かしようとする時には、少しだけ余裕を持つことが大事。一生懸命頑張ることももちろん大事なんですけど、もっと頑張るために少しだけでも心の余裕を持つことを意識してみると、もしかしたら今から見える世界が変わってくるかもしれない。
仕事と「相思相愛」になる
ふうあ
最後に、すごく難しい質問だとは思いますが、岡本さんにとってサッカーとは何かというのを聞いてみたくて。
岡本
確かに難しいな。一言で言うと、好きなものかな。
ふうあ
好きなもの。
岡本
いい結果を出すためには仕事と相思相愛であるかどうかがすごく大事だと思っていて、だから自分自身はサッカーを愛しているし、サッカーにも愛されていると思っています。その上で、今は仕事という感覚がもうないんですよね。仕事と遊びの境界線がなくなっているので、サッカーは自分自身であり、人生そのものだと思いますね。
ふうあ
ビジネス街を歩いていると、下を向いて出勤されている方もたくさんいますよね。そんな社会人にはなりたくないな、なんて思ってしまいます。岡本さんにとって「おもしろい大人」というのはどんな人ですか?
岡本
やっぱり自分の人生を自分の足で生きているかどうか。世間一般でクレイジーと言われる人が世界を変えているし、世界を作っていると思っているので。
「したい人1000人、実際にそれを実行する人100人、その実行したことを継続する人1人」と、よく言われますよね。大事なのはその一人になれるかどうか。その一人がおもしろい大人じゃないかなって思いますね。
ふうあ
卒業したら、好きなサッカーをする機会もなくなってしまうので、楽しみながら働けるように、これから考えていきたいと思います。
岡本
僕は、人生は思い通りになると思っているんです。自分の人生なので、自分自身がどう決断するかだけだと思うんですよね。
当たり前のように敷かれたレールに沿って、周りがこうだから自分もこうみたいなね。今はそういう時代じゃないから。ぜひ素晴らしい選択をして欲しいなと思います。
ふうあ
はい! ありがとうございました。
知らず知らずの間に、自分の中に固定概念があったのかなと思いました。決められた場所で働かないといけないであるとか、自分の決めた夢を叶えないといけないとか。
働きたい場所に仕事を作っていく、夢をどんどんアップデートしていくという発想が自分にはなかったので、気づくことができてよかったです。もっと柔軟にこれからのことを考えたいと思います。
ふうあの体験レポートはこちら
経営経済学部経営学科 4年次生
ケーヤ
株式会社ワゴン 代表取締役
錦田雅哉 さん