SEASON5 INTERN #01
大好きなファッションで、地元に貢献したい。
「好き」を仕事にするってどういうことですか?
大学でファッションの魅力に取り憑かれ、将来は地元の伝統織物を使ったオリジナルブランドを立ち上げたいと夢見るケーヤ。目の前に就職という決断を迫られ、今まさに人生の分岐点に立っていました。「好き」を仕事にすることへの不安もあるけど、やってみたいという想いは捨てられない。夢を叶えるために、どんな道を選ぶべきなんだろう?そんな葛藤を、同じ業界で挑戦を続ける「おとな」にぶつけました。
株式会社ワゴン 代表取締役
錦田雅哉 さん
経営経済学部経営学科 4年次生
ケーヤ
株式会社ワゴン 代表取締役
錦田雅哉 さん
宮崎県高岡町生まれ。24歳でセレクトショップwagonを創業。
2014年に”Short pants every day”を地元宮崎県発のブランドとしてプロデュース。クラウドファンディングで出資者を募りスタートした同ブランドは、日本でも珍しいショートパンツ専門ブランドとして注目されている。

自由な心と、
地元を愛する心

ケーヤ
はじめまして。大阪国際大学の稲垣啓哉と申します。本日はよろしくお願いします
錦田
こちらこそ、よろしくお願いします。めっちゃオシャレじゃないですか。洋服好きなんですか?
ケーヤ
はい、すごく好きです。アパレルショップでアルバイトをしていることもあり、服に携わる仕事にとても憧れがあります。錦田さんはどうしてファッションの仕事に就かれたのですか?
錦田
昔5つ上のお兄ちゃんが近所に住んでいました。僕が中学生になった頃に、そのお兄ちゃんは高校生で、いろんなファッション雑誌を見せてくれたんですよ。それがカッコ良くてね。そこからファッションに興味を持つようになりました。それから大学へ行って…大学って楽しいでしょ?
ケーヤ
はい(笑)
錦田
楽しいよね。誰も何も言わないし、自分の好きなことが好きなようにできるあの感じ。
大学時代に、いろんなアルバイトも経験しました。たまたま地元の人が経営する小さな店や会社が多かったんですけど、そこで出会った経営者の人たちがすごく面白くて、自分で何かやればこういう風になれるのかなって、思いました。
僕は教育学部で、元々は学校の先生になろうと思っていたんだけど、先生になるより自分もなにか始めたいと。
ケーヤ
それで服屋を始められたんですね。
錦田
うん、やっぱり洋服がいいかなって。よく買い物に行っていたセレクトショップに「地元でいつかお店をしたいので」とお願いして、卒業後一年ちょっと働かせてもらって、宮崎に帰ってきてお店を出しました。24歳の時です。
ケーヤ
すごい! 若いですね。
錦田
そうですね、それから28年たっちゃいましたけど(笑)
元々はセレクトショップとしてスタートしました。でも段々取り扱いブランドや中身も変わってきて。今はShort pants every day(※ショートパンツ専門のオリジナルブランド)の直営店としてwagonが宮崎にある、という展開がここではできればいいのかなと思っていますね。
ケーヤ
Short pants every dayはユニークなブランド名だなと思いました。名前の由来はあるんですか?
錦田
僕、ショートパンツがすごく好きだったんですよ。なぜかというと、膝を出していることの自由さなんですよね。何者にも縛られない自由さを得られている感じがして、それが僕はすごく好き。その自由な気持ちをいつでも持っていたいと思って、ブランド名にこめました。コンセプトは「FREEDOM & NATIVE」。自由な心と、地元を愛する心ですね。
タグのところを見て欲しいんですけど、縫製地を入れているんですよ。Made in japanじゃなく、宮崎県日南市。どの場所で縫われているのかというのを、ちゃんと記載したいと思って、こだわりました。

都会で働くこと、
地方で働くこと

ケーヤ
地元をすごく大事にされていらっしゃると思うのですが、東京や大阪ではなく宮崎でしかできないクリエイティブというのはあるのでしょうか?
錦田
いやぁ、都会のクリエイティブはやっぱりすごいですし、そこから受けている刺激を宮崎で表現しているという感覚が強いかもしれないですね。自分が都会に行くことで得られる経験や刺激、そういうのをひっくるめてできているのが、この洋服なので。
東京へ行くとよく「宮崎でやっているんですね、すごいですね」と言われますけど、全然すごいとは思っていなくて、地方でもやれることはまだまだあると思うんですよ。
ケーヤ
地方ならではの仕事・働き方を感じることはありますか?
錦田
海や山が日常の中にある生活のリズムとか、地方ならではの体験・経験がモノづくりに影響しているということはあるかもしれないですね。宮崎の海や山は、僕の生活の一部として欠かせないもので、逆にそれがないと出てこないアイディアがあったりはするのかなと。直接的な因果関係とは違うと思うんですけど。
日南海岸線を走ると、山側の方に日向夏というみかんの畑がいっぱいあります。僕も少し収穫のお手伝いをしたんだけど、めちゃくちゃ幸せな時間でした。木にみかんがズラーっとなっている様は感動するよ。この洋服のカラーは、日向夏のオレンジをイメージしているんだけど、そういう経験が僕の服には入っていると思うんです。それが田舎ならではのクリエイティブっていうことなのかな。
ケーヤ
僕は、京都の北部にある京丹後という所が地元なんですけど、そこに『丹後ちりめん』という伝統織物があります。それを使って、アパレルブランドをやってみたいと考えているんです。
錦田
おお、すごい。素晴らしいね。何かきっかけがあるんですか?
ケーヤ
地元にいた頃は、田舎でお店も少なくて、ファッションというものを意識していませんでした。でも、大学で大阪に来て、いろんな種類のファッションに出会って、すごく面白いと思いました。アパレルショップでアルバイトをするようになって、自分の好きなもの=ファッションと、地元の伝統産業である『丹後ちりめん』のマッチングができたら、地元・地域の活性化にも繋がるんじゃないかと感じて、やりたいと思い始めました。
錦田
へぇ、そうなんですね。丹後ちりめんの実物を見たことがないんですけど、どんなものなんですか?
ケーヤ
真っ白なシルクの織物で、着物によく使われているんですけど、最近は海外でも注目されています。京丹後市には、『丹後ちりめん協会』が作られていて、イベントや展示会なんかも開催されているんですよ。
小学生くらいの頃から、そういうものがあるということは知っていたんですけど、大学で外に出て初めて意識するようになりました。服が好きだし、素材としての興味もあって。錦田さんのブランドでも、久留米絣を取り入れられていますよね。地元の素材をブランドで活かすということに、とても共感しました。
錦田
ふと足元を見たら、自分のすぐ近くにいろんな素材や環境があったりしますよね。「らしさ」ってなんだろうと考えた時に、その場所にあるものを使うというのは、今思えば必然だったのかな。当時は思わなかったけど、そんな気がしますよね。

基本苦しい。
でも乗り越えられるのは、好きだから

ケーヤ
錦田さんは新しいことにチャレンジをされていて、人生がすごく楽しそうです。仕事も楽しんで、サーフィンや山登りといった趣味も充実されていて、仕事を通して地域の活性化にも貢献されていて。すごく憧れています。
錦田
楽しそうにしていますけど、基本苦しいんですよ。でも、楽しくしているところしか、基本表に出てないから(笑)
ケーヤ
(笑)
錦田
9時5時でオフみたいなことはまったくないですし、24時間365日ずっとオンでずーっと考えているんですよ。在庫とかお金の問題も含めて、経営というのは苦しいですよ。でも、苦しいことを苦しい顔でやっていると苦しくなるから、それをどう楽しむかということですね。
ケーヤ
はい。
錦田
苦しいけども、それが形になって伝わってお客様の元に旅立った時の楽しさの方が何倍も大きい。好きなことをやっていると、苦しいを乗り越えられますよね。好きだから。それに尽きるのかなって。好きだから24時間365日やれているという気はします。
ケーヤ
働くということを考えた時に、やりがいや楽しみを追求していける大人になりたいと僕は思っています。若いからこそ言えることかもしれないんですけど…自分で新しい道を開拓していきたいとすごく思っていて。
でもやっぱり、壁にぶつかったり分岐点に立って迷う瞬間があるじゃないですか。今も就職活動中なんですけど、どの道を選ぶべきか悩んでしまって…錦田さんはそういう時、何を一番大事に考えますか?
錦田
結構難しい質問ですね。分岐点でいうと、AとBの選択肢がある時点で、なんとなく自分の気持ちは決まっているんですよ、多分。僕よく言うんです。「左胸に手を当てたら、もう決まってるよね」って。
どちらへ行きたいのか。行けるかどうかは別として、自分の中に行きたい方向はあるんですよね。それを例えば世間体とか、給料とか、いろんな条件をフィルターにかけて、どうしようってなるんだと思う。だから「なんとなく自分はこちらに行きたいんだな」というのが見えたら、僕は素直に従うようにしています。
ケーヤ
その一歩を踏み出せるのがすごいですね。もし違う道を選んだら、と考えて迷ったりしませんか。
錦田
いいじゃない、それはまたその時考えれば。とりあえず今は、今の自分の中でのベストな答えを出して決めたんだから、って俺は思うけどな。
ケーヤ
仮に選んだ方で失敗しても。
錦田
失敗した時にそこでまた分岐点があって「あぁ、こっちじゃなかったな。じゃぁ次はこっちに行ってみよう」って、それでいいんじゃないですかね。
ケーヤ
すごいなぁ。僕も自分の中の直感や感情を信じてみたいと思います。
錦田
僕ね、振り返ったらいっぱい失敗してるんですよ。選択ミスも色々あります。でもそれも経験しての今だから、大した問題じゃないかもね。五十何年こうして生きていられているわけだから。失敗をしたからこそやれているのかもしれないし。

背伸びをして得られる
経験の価値

ケーヤ
昨日は(縫製)工場も見学させていただきました。裏地や見えないところにまで、すごくこだわって作られていて驚きました。
錦田
ありがとうございます。いろんなブランドがあるので、その中でまず選んでもらえるように、選んで着てもらえたら気に入ってもらえるように。自分の知識の中で色々考えて、実践しているつもりではあるんですよね。
ケーヤ
工場の方に錦田さんの印象を聞いたら「すごく熱い人だ」って。
錦田
あはは。
ケーヤ
「コロナがあったから錦田さんに出会えた」とおっしゃっていました。やっぱり、人と人の繋がりや巡り合わせというものがあるんだと感じました。
錦田
そうですね、コロナで工場が休業を余儀なくされていたところ、たまたまご紹介いただいて縫製を引き受けていただけることになって…という流れだったので。それがなかったら出会えてなかったかもしれないですね。縁ですよね、人との出会いは。
ケーヤ
せっかく出会えた人との縁は次に繋げていきたいですし、出会えるチャンスがあったらぶつかりにいかないと、すごくもったいないと思います。
錦田
知っている人の中でいる方が、楽じゃないですか。「楽しい」じゃなくて「ラク」。アウェイな場所に行くのは、大変だし力を使う。でもそうするから出会いも生まれるわけですよね。ちょっと背伸びして頑張って求めていくことで得られる経験は大きいんじゃないかな。
ケーヤ
はい! 今後もチャレンジしていきたいです。
錦田
若いしなんでもできると思います。これは違うなと思ったら、またそこで変えればいいから。今やりたい、した方がいいと思うことをしてみたらいいんじゃないですか。どれもこれも無駄じゃないですよね。楽しみですね、いいなぁ若いって(笑)
そうそう、20代はお金使ってくださいね。貯金とかしちゃダメですよ(笑)
ケーヤ
え?(笑)錦田さんの20代もそうだったんですか?
錦田
そうですね、服買ってましたね。店始めてからは特に。それが仕事でもありましたからね。経験することが自分の仕事に生きると思ったから、そういう投資は惜しまなかったな。背伸びをして一人1万円するコースを食べるためにレストランに行ったりとか。
ケーヤ
いいなぁ、楽しそう。
錦田
そりゃ楽しいよ。こんな世界があるんだって。レストランの経験はすごくいいですよ。そこから発想が広がるから。一万円のシャツを買うように、一万円の食事をしにレストランに行った方がいいよ。今月はシャツを買わずにレストランに行こうって。美味しいものには理由があるから、服と一緒で。だから、お金使ってくださいね。経験するにはお金がかかっちゃうから(笑)
ケーヤ
はい! 今日は貴重な時間をいただいてありがとうございました。すごくいろんなお話を聞けて、自分を見つめ直す時間になりました。これからどんどん新しいことにチャレンジしていきたいと思います。ありがとうございました!
SUMMARY
自分を見つめ直すきっかけになりました。今後の自分にとって、とても大きな影響を与える2日間になったと思います。
人生の分岐点で、どうやって決めるかという話が一番印象に残っています。就職を前にした今のタイミングは、まさに分岐点だと感じています。自分の本当の気持ちに素直に、納得のできる選択ができるようしっかり考えたいと思います!
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